「だからアーグナーもブロウも、命を懸けて戦った。死ぬ覚悟で。それを邪魔するのは無粋だった」
諸君、戦争(描写のある小説)が好きかー! 大好きです!!
と言うことで、ついにその内実が描かれることとなった人魔大戦。
白ちゃんがノリノリで観測設備作ってるのには笑った「ついにこの時が来た!」じゃないんですよ! なにやってるんだこの神様。
挿絵で見るとなおひどい。時代を先取りしすぎでしょう。……いや、一応発展した後に崩壊しつつある世界なので、ここだけ過去に戻ったともいえるというか。文明復活? 白ちゃんパワーによる疑似再現だけど。
総力戦に近く、戦場も散らばっているので今回は各エリアに居る人物の視点が切り替わっていく感じの構成。
それぞれの温度差とかが感じ取れて楽しいですね。ところどころで白ちゃんによる「ここがポイント!」コーナーが入ってたのも笑えてよかった。
魔王に歯向かって風前の灯ながら、アノグラッチを使って自分たちに被害を出さずに砦を攻略してのけたサーナトリアの手口が好きですね。こう、裏技駆使してる感じがする。
……実際にやられた防衛側はたまったもんじゃないでしょうけど。というか、砦攻略できるレベルの猿を相手に、蜘蛛子良く生き延びたなぁ……。
川を挟んだ魔法の打ち合いは、相手にロナントがいたために敗退。あの爺、ますます人間離れしてきてる感がある。
メラゾフィスに家族を殺された転生者、クニヒコとアサカが彼と対峙する戦場に居て、相対する事となって。
魔王や白という例外を知って、ソフィアに付いて行こうと誓ったメラゾフィスの方が順当に強いんですが。
それでもメラゾフィスに噛みついて、手傷を負わせたクニヒコ達が凄い。……まぁ、本領発揮できない日中で、転生者相手だからとか理由はいくつもありますが。
それでも撤退の判断をさせるくらいの状況は作ったわけですし。
フェルミナ・ワルド・ソフィアの十軍関係者の歪な関係も、見ている分には楽しい。婚約者に裏切られた上、白の狂気的な特訓を課され、こき使われているフェルミナちゃんの明日に幸あれ。
鬼君ことラースの戦術は……禁忌関連の事情知ってるとは言え、容赦なくて震えた。
勇者パーティーが本当に人類の希望だったんだな、と言うのが分かる描写が重ねられて話に厚みが出てましたよね。
終盤、戦場に放り込まれたクイーンタラテクトの存在に衝撃を受けながらも、抗おうとしたのは見事でした。
聖女もクイーンに恐れを抱いてましたが、それがただの眷属だって言うんだから魔王陣営のインフレがすごい。だってその気になればクイーンのおかわり出来るもんな……。
様々な事情を察した上で、それでも魔王に従うと決めて戦ったアーグナーのこと、嫌いじゃなかったですよ。
白と魔王の力を終わる直前まで測り損ねた道化的立ち位置で、それでも自分なりの在り方を貫き通したブロウのことも。
アーグナーが見捨てられたと思わずに撤退を選んでいたら彼だけは回収できたかもしれないけど。
……ブロウと同じで、それは出来なかっただろうなぁ。彼の在り方的にも。魔王たちとアーグナーの間に、「あれは撤退用の支援だ」と通じるだけの絆もなかったわけだし。
その辺り、魔王たちにしても予想外ではあった模様。スペック高くても、全てが計算通りに行くわけでも無いもんな……。