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「どこまでとおっしゃられても……。取れる時に、取れるところから、取れるだけ、取っておくもの、とわたくしは教えられて育ちました」

 

プロローグはボニファティウス視点。

彼は次期領主としての教育をヴィルフリートに施していたそうですが……不満を口にするだけの現状では、相応しいとは言えないとジルヴェスターに申し出て。

名捧げのルールが変わってしまう懸念をローゼマインに伝えてくれたりと、孫娘愛が強すぎる面白キャラなだけじゃなくて、ちゃんと周囲が見えてるんですよね。

 

「ローゼマインは人を育てるのが上手い。どれも私が欲しいくらいだ」なんて最高の褒め言葉じゃないですか。

フェルディナンドから、他の領主候補生の側近と力量差が生じてるとか言われてましたしね。

ボニ様に比べると、ジルヴェスターは甘いなと思わざるを得ない。嫌いではないですけどねぇ。ここで忠告を貰っているのに、結局ヴィルはあぁなるわけですし。

 

この巻だけでもローゼマインの周囲は騒がしいです。

王族の願いで、未成年なのに地下書庫の調査を手伝わされるし(これはローゼマイン自身も楽しんでますけど)。

他の領地からは中央神殿に入れようとする動きがあったり、果ては王族に迎え入れようとまでしてきますからね。

 

星結びの儀式が挿絵になっていたのは最高でしたね。

神々しいって言葉が出てくるのも納得できる、迫力があった。

そして、祠巡りを強要されたローゼマインと、王族として命令してくるアナスタージウスとエグランティーヌの挿絵も、構図とローゼマインの顔に陰入っており断絶を感じる構図が目を引きました。

 

商人聖女の章が、好きなんですよね。

下町で育ち、神殿で学び、領主の養女にまでなった彼女だからこそ見える世界と出来る提案がある。

ローゼマインが積み重ねてきた時間の集大成とも取れる交渉ですから。

……脅しも混じってるけど。まぁ、交渉相手になる王族が、話し合い席を設けたからいいだろう? と思ってる傲慢さが透けて見えて、イライラするシーンでもあるんですけど。

 

祠巡りの時もそうですけど、ローゼマイン達の貢献は小さくないと言いながら、向こうの都合ばっかり押し付けてくる王族はハッキリ言って嫌いです。

アナスタージウスの方は、祠巡りを終えた後にすまなかったと言ってくれる描写が入ってましたが。一回の謝罪で許せるような真似じゃないぞ……。

 

ちなみに書籍化で祠巡りの描写は加筆されていて、それぞれの神様の授けてくれる言葉が分かるようになってます。細かいですけど、結構嬉しいポイント。こういうの気になるんですよね。

 

エピローグは、ヒルデブランド視点。WEB版の『閑話 望みと出口』。

恋は盲目状態で暴走をはじめそうな王子が恐い恐い。マグダレーナは、変に昔んフェルディナンドを知ってる分、認識が歪んでる部分はあるよなぁ、と思います。

まぁ、ローゼマインみたいな突飛な存在に影響されて、変化したことを他領の人が把握するなんてのは難しいでしょうけど。

 

巻末SSはアドルフィーネ視点の「望まぬ結婚」とオルタンシア視点の「シュラートラウムの花」。

前者は、順調にジギスヴァルト王子の株を落とす話でしたね。いやぁ、傲慢ですね。

自分達の意見が通って当然と言う振る舞いと、言葉選びのセンスがなくて敵ばっかり作ってる気がする。これで本当に貴族院出てるのか……? って思いたくなる。

これはアドルフィーネが、個人的に好きになれないというのも分かる。無理はない。むしろナーエラッヒェは彼のどこがいいの……?

それでも政略結婚だから、と受け入れていたのに無茶ばっかり言うんだもんな……。

 

オルタンシア視点では、彼女が智の番人として覚悟を示してくれてるのが好印象。

一方で、彼女の夫である騎士団長には不審さが募るといいますか。……最後のシーン、正直怖かったですよ。おっかない。