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「そこでなら、黄金の夢が見られる。世の中を動かすことだってできるかもしれない。それに滾らない商人がいるわけないでしょう?」

 

BOOKWALKER読み放題にて読了。期間限定タイトルで、5月31日まで。

ダリヤとヴォルフの一風変わった友人関係は順調に続いていて。

偶に食事を共にするのを、お互いに楽しみにしているようです。周囲から見ると、ヴォルフからの好意は疑いようのないモノで、自覚してるかどうかが問題、というところのようです。

お互いの事情が事情だし、自覚した所で進展は亀の歩みになりそうですけどね……。

 

ヴォルフは魔物討伐隊の仕事をしながら、「早く帰りたいから」と意見具申までするようになって。

一方のダリヤも、ヴォルフとの会話から靴の中が乾燥しやすいように工夫した靴下と中敷きを作ったり、前世知識を活かして泡ポンプのボトルを作ったりしてます。

二人で人工魔剣を作ろうとしてるときもそうですけど、ダリヤは根っからの職人なんだな……って気がしますね。物作りを楽しそうにすること。

 

まぁ、作った物がこの世界においては革新的すぎて。

ダリヤしかいないロセッティ商会では捌ききれない程の大口注文が飛び込んでくることに。

商業ギルドのガブリエラなどの助力も得て、外注に出したり、他の組織を蒔き込んだりして道筋を作ってましたが。

それでも慌ただしいのは変わらず。イヴァーノがダリヤの価値を認めて、彼女の商会に来てくれたのは何よりでした。

 

先述の通り、ダリヤは商会長になったものの職人気質が強いですからね。イヴァーノなら商人の目線でフォローできる上、元ギルド職員で色々詳しいって言うのは頼もしいです。

貴族対応に関しては、まだまだ勉強の必要がありそうというか。そんな言い回し知らんよ……ってのが多くて困る。

 

巻末には番外編として「父と娘の魔導具開発記録~防水布~」が収録。
ダリヤの父カルロのエピソードが記されています。
開発のために机で寝落ちしてる娘に、行き過ぎない範囲でアドバイスしてるのが良かった。ヒントを投げても、ダリヤが気付かなかったら終わりですしね。過保護ではあると思いますけど。

彼の想いとかも色々紡がれてますが。トビアスとの婚約が確定する前から、体調に異変は感じていたのか……。それを隠し続けていた、って言うのがなんとも。

彼が多くの人に「貸し」を残していった真意とかも明かされる良い短編でした。