「やれることを、やりたいようにやっているだけ。やりたくないことをやってはいないだけです」
最終的にスピアヘッド戦隊に配属されることになる、シンエイ・ノウゼン。
とはいえ彼にも新人で、未熟だったころはあって……。帝国の貴種の血を引くがゆえに、エイティシックスの中でも蔑視されやすい下地があって。
そんなシンが潜り抜けてきた戦場、その中で出会った先達たちのエピソードが断片的に語られます。
例えばそれは、最初に配属されたシンが、まだ首元の傷やそれに絡んだ出来事を飲みこめていなかった時に受け入れてくれた戦隊長だったり。
それとは逆に、彼にヘイトを集中させることでガス抜きに利用した戦隊長だったり。
多くの人や物が失われていく中、彼はそれでも戦って生き延びて……ファイドと再会したり、彼を認めてくれる人と出会ったりもしてるんですよね。ただ、死神になった彼に多くを残して去っていってしまっただけで。
共和国時代のエピソードはやっぱり重く暗い話が多いですね。引き込むパワーはあるし、面白いんですけど痛くもある。
こうした経験を積み重ねてきたからこそ、シン達みたいな号持ちが出来上がったんだなぁ、と納得は出来ました。巻末書き下ろしの「優しかった世界」みたいなIFがあってくれたらな……!! と夢想もしましたけど。
スピアヘッド戦隊に来てからのエピソード「トリアージタグ・ブラックのありふれた日常」、偵察任務に出発した後を描いた「レテの畔」、そして特徴的な〈スカベンジャー〉なファイド視点で紡がれる「ファイド」なども収録されています。
ファイド、音声発信ができないのが惜しいと思うくらいには感情表現が豊富というか、面白い子だったんだな……いや、それはそうか。シンの前で一喜一憂するもんな……。