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「だけど本当にいやなのは……一番いやなのはね。あたしが自分で、あたしとあんたを比べることよ。そんなことをしたって意味がない。何にもならない。わかってるのにね。――ほんとにいやになる」

 

中編3つからなるエピソード。

まずは『優しい狼』。リィの姉であるドミューシアが体験入学で連邦大学にまでやってきたものの、受け入れ先がなんの因果かリィがいるアイクラインの高等部だったそうで。

彼女が他校との交流を目的にしたダンスパーティーに参加した所、ホプキンス大学フットボールチームのエースであるキアランって男子が声をかけてきたものの……リィと似ていないことを、あげつらうような言動をして彼女を泣かせた。

 

それを黙ってみているリィではなく、ルゥに自分を女の身体にしろと迫ることに。

レティシアからアドバイスをもらって、「女で失敗させる」という作戦を実行するための行いでしたが……叩きのめすために演技を徹底していて、おっかなかった。

自分が大切にしている相手に手を出されたら、本当に容赦しませんよね。彼自身に悪意があったわけではないと分かりますけど、視野は狭いし。じっさいに、彼が知らなかったとはいえ面倒ごとが近くで生じていたわけですから、どうしても評点は辛くなりますな。

後日ロッドでボコボコにされてそうだし、多少は溜飲下がりましたけど。それにしたってなぁ。

 

続いて『初戀の詩』。

ジンジャーの舞台にヴァンツァーが招待されてましたが……『サイモンの災難』でようやくジンジャーの名前を知った彼は、出演作品を見始めたところだったとか。なんというか、真面目だなぁ。

デビュー作が「駄作だけどジンジャーが出ているから」と連邦大学の映像図書館に保管されてるの、良いなぁ。かつてジャスミンと造り上げたキャラが、多くの人に認められてるって事で嬉しくなる。

 

ジンジャーに連れられて、彼女に懸想している少年に対面させられたり。かと思えばその少年が攫われたのを察知して、救助に向かうことになっていたり。なかなかに騒がしい一日になってましたねぇ……。

ヴァンツァーの居ないところで語られていた話ですが、人工冷凍睡眠を使って長い時間を眠っていたジンジャーが眠らない事にしたっていうの、中々のビッグニュースでは。

 

最後が『怪獣の宴』。怪獣夫妻が、同じくジンジャーの劇を見に行く話ですが。

『優しい狼』で女性になってたリィも客席にいたり、色々リンクしていたのが面白いですね。着飾ったジャスミンとケリーが並ぶと、かなりの迫力があっただろうなぁ。表紙絵もインパクトあって好き。

劇場で怪しい企みが進行していて、巻き込まれたジャスミンが連行される事態になってましたが……彼女を連れていくとか、裏組織にしたって無茶をするなぁとも思いましたが。

叩きのめされている様は、いっそ痛快でした。合掌。