「ただ、もしかしたら――もしかしたら、ですが、二人を活かせるまでもなかったかもしれません」
クーア財閥総帥だったケリーが残したモノ。
冷凍睡眠状態のジャスミンと、彼女の治療方法を模索する施設。そして、それと隣り合った形で作った、彼のクローンを生み出すための施設。その存在がどこからか連邦に漏れてしまって。
今のクーア財閥は総帥を置かず幹部たちによって運営されているそうですが、その幹部たちの過去の弱みに付け込んで、ケリーを再生するためのプラントを持ち去ったとか。
不老不死が実現できるかも、という毒の様に甘い蜜を見つけたら、そりゃ集るよなぁって感じではありますけども。
かつて約束した相手の遺産を、そんな風にいじられて黙っていられるルゥではなく。連邦の秘密基地に乗り込もうってんだから、行動が迅速に過ぎる。
ただそこで失敗してリィに悟られてしまったのは、痛かったですね。タイトルにある通り、ついに海賊王が帰還してくれるわけですが……あとがきでは「予定は未定」とか書かれていて相当な難産だった模様。終盤にしか登場シーンないですけど、やっぱり彼の描写を見ると安心できるというか、状況が良く分からない中でも最善に近い動きをしてるのはお見事でした。
ジャスミンが死んでおらず、治療法がないために寝ている状態だというのを知った『スカーレット・ウィザード』で登場したキャラクター達が、眠る彼女と再会して涙する場面が好きです。
……対面者からジンジャーを省く、なんて恐ろしい真似をしたアレク以外の幹部の行動には肝が冷えますが。絶対碌な目に合わないぞ……。