「貴様は正しいが、あいにくとそれは俺の王道を土足で踏みにじっている」
アザゼル化したネフテロスに敗北し、信頼する配下であるゴメリとの通信も途絶。それによってキメリエスまで離脱してしまい……シアカーンが入念に整えた軍勢と、準備不足の状態でぶつかる羽目になったザガン。
どれだけ準備したかで勝敗が決まるなら勝ち目がない、と言いつつ楽しそうにできる辺りどんどん魔王らしくなっていきますねぇ。
ネフテロスを放ってはおけないし、領土でもあるキュアノエイデスは守らなくてはならない。防衛してるだけでは勝てないので、シアカーンが用意した一万の軍勢への対処と、シアカーン本人の排除やビフロンス対策も必要になる。
後手に回ったのは確かなのに、それでも盤面を拮抗させる手を打てるあたりザガン一派もかなり層が厚くなってるなぁというのを実感しました。
それすらも読み切って再度優位を取りに行くシアカーンの老獪さもお見事でした。ただ、嫁との約束を果たすため、刻限までに全てを終わらせる腹積もりだったザガンとは、最後の戦い方と言うか手の打ち方が違って、そこが今回の結末に繋がったのかな、と言う感じ。
複数の魔王がぶつかり合う規模の大きな戦いで、ここまで本気で敵対したからには、まず間違いなく「魔王」のうち誰かが死ぬ。
それはつまり新たな刻印を宿す魔王が生まれるということでもあって……それを餌にバルバロスを上手く動かしているのは笑いました。結構奮闘していたのに、彼自身は獲得しそびれたというオチがつく辺り哀れではありましたけど。
配下には指示を出したものの、魔王候補筆頭と考えている愛娘のフォルには、自分で考えて動けと言うザガンと、その信頼に応えようと力を示す彼女の親子関係が素敵。
シアカーンが用意した「過去の英雄からなる軍勢」の中に、近年まで生きていた相手も混ぜられていた所とか、それぞれの因縁の相手との戦いまで描かれていたのは満足度が高い。
ザガンの攻撃によって瀕死状態だったビフロンスは基本潜伏していて、最後の最後で我儘を貫いてましたが。度し難い敵でしたけど、あの終わりはどこか寂しくて綺麗だった。
しかし空席が出来た魔王の座に、新たに就任した人材がザガンの身内が多くてヤバい。
ここまで戦力が集まるともはや向かうところ敵なしなのでは……? みたいな気すらしますけど、最終ページに描かれた相手が敵に回るとしたら一筋縄ではいかなそう。
今までの行い的にビフロンス程悪辣でもないのかと思っていましたが、シアカーンの記憶で描かれた2代目筆頭の顛末を想うと、実のところかなりの劇物なのではあの御仁。