「これはおっさんの喧嘩だ。でしゃばる気はないが、俺も一枚噛ませてもらうぜ」
一通りの騒動に決着がつく完結編。この後、4巻も刊行されてますが、そちらは事件終わったあとの後日譚を作者さんが「もう少し書いてみたくなった」って書いてくれたものになるそうです。
偽物のシェンブラック海賊団は連邦軍の派遣してきた艦隊を撃破し、トゥルークの船とそこにのった人員を人質にとり、薬の材料を大量に要求。
交渉を行いつつ受け渡し期日の7日後までに、事情を詳らかにしようと奔走するケリー達の苦労が偲ばれます。……今回は特にダイアンが大変そうでしたね。調査する情報が膨大すぎて、それでも尻尾を掴むあたりが彼女だよなぁ。
海賊たちの決戦の舞台に、名を汚されたグランド・セブンの乗組員たちが駆けつけてくれたのも熱かったですし……2巻の最後に飛び立った船の正体には驚かされました。
この海域で異常事態が発生しまくる原因は不明ながら、起こると知っていれば対応できる。その情報を持つ人員が来てくれたのはありがたかった。
付けるべき決着をしっかり付けて、無事地上に帰還したケリー達もティーナの乗組員もお見事でした。
このドタバタ騒動というか、トゥルークの僧侶たちの特殊さ。50年おきに発生している「大潮」の実態などなど。ダンや連邦関係者が今回目にしたわけですけれど。
これはまぁ、事前に語っていたところで信じては貰えないだろうし、これを仮に報告書にまとめあげたとして、読んだ人が誰も信じられない怪文書になるんだろうなぁ……。
トゥルークでの海賊騒動が終結してから、薬の問題が決着したわけですが。まさか出所が、ねぇ……。ジャスミンが居たからこそ解決までが早まっただろうなぁ、というか。
連邦、意外と足元に厄ネタ抱え込んでますよね。関わってる人員が多いからこそ、トラブルも怒り得るんでしょうけどそれにしたって……。
事後処理のあわただしさを思うに、かなり広まっていたんでしょうけど、完全に爆発する前に火元を抑えられたのは何よりでした。
巻末にはトゥルークの海賊序章「大いなる闇が来た」を収録。
トゥルークの僧侶に初めて会った時、ジャスミンがその強い在り方から「本当に女性ですか」と問われているのは笑う。ジャスミンは体躯も大きいから、よく言われることながら不快感を感じさせなかったというあたり、彼らの積んできた徳を感じる。
1世に招待されて、トゥルークの高官とアドレイヤに対面して。ライジャの父が現れて、ライジャがやってきて……街中でルゥと出会ったライジャの母親までやってくるんだから、もう大変ですよ。
特に普通に講演聞きに行っただけなのに、ライジャの母親の秘書してる人に跪かれたルゥが。ライジャの両親は、僧籍を離れてなお高位の僧侶が持つ感能力を失っていない、というのも1世からすれば見逃せない情報だったようですけど。
ここでの会話が、あの大騒ぎにつながるのか……とちょっと天を仰ぎたくはなりました。