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「でも、ああ……わかったよ。それが小織の望みなら、僕が断れるはずがない」

「……そうするべきだから?」

「いや。――僕自身が、そうしたいと思っているからだ」

 

正直でないかもと思っていたところ、作者さんが頑張ってくださり読むことが出来た4巻。

完結巻と言っていいでしょう。正直なところ謎は多く残されていて、どこまで回答が示されるものかと思っていましたが……思っていた以上に情報が出てきて正直驚きました。

事前の告知でも後書きでも謳っていた「解決編」に偽りはありませんでしたね。……途中なんか地の文で主人公がついにラブコメ否定してたような気もするけど、きっと勘違いです。いや実際、割とラブコメしてた感もするけど、どうなんだろう……。

 

冒頭は3巻エピローグのしばらく後、最悪の許しを得た伊織君は流石に呆然自失としていたみたいです。

……そんな伊織くんをほっぽってナナさんは帰ったみたいですね! 最悪だよあの人! 本当にただ散歩中に面白いものみたから声かけただけで、その後には責任を負いませんってか!?

傷付いて自分でも心が折れたと言ってる彼の前に、陽星を登場させて「名前、訊いてもいいですか?」とか言わせるのも鬼だとは思いましたけども。

 

そして伊織と陽星が出会ってしまった時、空が輝き……2人は気がついたら7年前の77日に来ていた。

不可思議な事態に巻き込まれたので改めて自己紹介して、星の涙の効果範囲内にいたからか、陽星は日付が変わっても伊織を忘れることが無かった。

そして2人は現代に帰る為に協力する事になって。謎の女性の助力で、宿泊場所を確保できたのは良かった。

 

「おふとんはひとつしかないのです?」「そういう話はしてないのです」とか。「世界の質量を増やしている……!?」とかテンポのいいやりとりが多くて、やっぱり涼暮先生の文章好きだなぁとは思いました。こころ語の独特さも好きですよ。癖になる感じがする。

 

昔の流希と再会した後に「やっぱりそれは勘違いなんだよ、流希」とか思ってたり、沈みまくってる伊織君ではありますが。

昔の自分相手には腹立たしさを覚えたりしてる辺り、氷点下男とか笑わせてくれるわ……。心が折れたと言いつつも、今までの習慣か違和感を覚えた部分の考察を始めたりしてましたし。結局、伊織は伊織ってことなんだなぁという部分は(彼の記憶が信用できないとしても)信じられたし、作中でも信じてるキャラが居てくれたのは、いい塩梅だったと思います。

 

昔の流希や伊織、まなつ、きょーちゃんを名乗る謎の女性、遠野、小織などと出会い会話をしていく中で、囚われていたものから解放されていきエピローグに辿り着いたのだから拍手喝采したい気分ですね。

特に流希。既に亡くなっている伊織たちの幼馴染である彼女は、これまでも多様な故人ヒロインをお出ししてきた涼暮先生の強さを感じたといいますか。敵わないなぁ、と思いました。
エピローグ以降にもあるだろう出来事とかも気になりますが、ひとまずの区切りとしては満足のいくものでした。本当に面白かったです。




……と、ネタバレを(極力)伏せつつ感想を書いてみましたが。ネタバレ増し増しの感想をふせったーに投げたので気になる方いたらそっちもどうぞ。