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「世界は思っている上に広い、か」

 

BOOK☆WALKER読み放題にて読了。期間限定タイトルで12月31日まで。
別大陸に本拠地を置く魔族から侵略を受けていた人類。

とある国の王子であるアンリは仲間を連れて敵地に侵入し、ついには魔王討伐に成功。それは偉業と言っていいんですけど、その場で一緒に旅をしてきた婚約者ロメリアに対して婚約破棄を言い渡すって言うのは、空気が読めてないにもほどがある。

 

男女比が1:4のパーティーで、ロメリア以外の女3人はアンリに味方するし、これまで辛い旅を続けてきただろうに思慮が浅いしで頭痛い。

仮に婚約破棄を良しとするにしても、時間と場所を考えろよ、と。英雄譚の様に謳うとしても、敵国のトップを暗殺したわけですし、密かに帰らないとならない筈が、帰路で余計な戦闘をして存在を察知されてるとか、むしろ良く旅が成功したなレベル。

 

その手助けとなったのが、主人公であるロメリアが授かった『恩寵』という異能なわけですけどね。

仲間に幸運をもたらし、敵に不運を与える。言葉にすれば単純ではありますが、そういう地味な力の方が侮れないものですよねー。こういう渋い能力好きです。

 

ただ、WEB版だと「『恩寵』について人に話すと能力は失われる」と言われていた為口を噤んでいた、という設定だったんですよね。それだったら、アンリ達がロメリアの貢献に色眼鏡かかっちゃうのも分からないではない。

でも書籍版だとその縛りないように読めるんですよね。稀有な能力だから漏らして、幽閉され座敷童の如く扱われる可能性があるから言わなかった、みたいな書き方になってる。それだとちょっと納得がいかないなぁ、ってモヤモヤしました。

能力の条件が、周囲にいる仲間に幸運をもたらすってものなのに、幽閉された人を仲間だと思えるの? とか思っちゃう。……アンリ達みたいなどうしようもない仲間に対しても効果発揮してたので、一概にありえないとも言えないんですけどね……。

 

その辺りがちょっとモヤモヤしたんですが、大枠で見ると好きな作品です。

魔王を倒して敵を混乱させることが出来たとしても、こちら側の大陸に進行してきた軍隊まで消えるわけではない。

だから、それに対しての備えが必要である、って現実が見えるロメリアが好きです。

婚約破棄によって中央から離れ、領地に戻った後、そこを守るために努力を続ける彼女が格好いいんですよ。だから、少しずつ味方が増えていくのも分かる。

 
旅で多くを学んだロメリアに対して、アンリ王子の視野の狭さとかを想うと、婚約破棄して良かった……と思ってしまいますね。
平穏はまだまだ遠そうですけど、どうか生き延びて幸せになってほしいと思います。