「私、魔法使いじゃないから」
SF世界の住人である少女ララ。彼女は成人祝いと称してリゾート地へバカンスに向かおうとしたところ……謎の現象に巻き込まれ、彼女の知るよりも原始的で、でも魔法の様に未知の要素を持った、言ってしまえばファンタジー世界へ迷い込んだのだ。
しかも、バカンスに向かう手法が冷凍睡眠とワープの併用だったとかで、ファンタジー世界に墜落してからしばらく眠り続けていたって言うのはちょっと新鮮でびっくりした。
墜落地点に森が出来るくらい時間過ぎてますからね。ワープ併用でもそれだけかかるって、ララの住むSF世界のワープって意外と距離を稼げないのかしら。
ララは幼く見える容姿で、ベースの身体能力はそこまででもなさそうですが。ナノマシンによる強化や、ナノマシンを用いて魔法のような現象を引き起こすことが出来て。
彼女の世界ではそれらは暴漢対策だったそうですが、このファンタジー世界では住人たちが恐れる魔獣を一蹴できるだけの火力があって、最初に訪れた村の住人からは怖がられる始末。
村には魔獣討伐の依頼を受けて、向かおうとしていた傭兵の女性イールが居て。彼女が色々と面倒を見てくれることになり、なんとかララもこの世界に適合出来たというか。
ナノマシンが万能だから、それで大体対処できるっていうララに、目立つからナイフを作るのは良いが鞘や柄といった外見は普通の素材を使った方がいいとかアドバイスしてくれるし、イールと出会えたのは本当に幸運でした。
ララの特殊さを知りながらも忌避せず、同行してくれるし。それはイール自身が生まれつきの呪いを持っていたから、って言うのも理由ではあると思いますが。
イール曰く傭兵流の自分のいきたいところに行く生き方に、ララも付いて行って。その先で神官の少女ロミと出会ったり、そこそこ大きい騒動に巻き込まれたりしますが。
ララの起こす現象を魔法と思って、それを封じるフィールド作ったから完璧! ってやった相手を、これナノマシンなんだーって呆然とさせるのは流石に笑った。
相当自信があったのかもしれないけど、それでトップ拿捕されちゃダメでしょ。
巻末には書籍版特典SS「ロミの魔法教室」。
歩き続けるのが暇で「空でも飛んで次の街に行けないものか」と、ロミに聞いて。一応存在はするが、魔力の消費が激しかったりで使い勝手が悪いから使われてないそうですが。
そこから、魔法はアレンジが効く部分もあるんですよ~と話が広がっていくので、割と面白かった。