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『正義たるが連邦軍人の誇り。人間たるがエイティシックスの誇りなのだろう。そのとおりに行動しろ。復讐を選ばなかったなら、これからも選ぶな。貴様らが良く、生きる邪魔を、奴らなどにさせてやるな。(後略)』

 

ゼレーネから齎された情報と、秘された女帝。

連邦はそれらを武器にレギオンに反攻する作戦を立てており、その目標に向けて動き出そうとしていた。

シンが連邦に居た親族と、異能に関しての相談をする時間を重ねていた、という描写が冒頭にあって、彼もどんどん変化していって明るい未来が見えてきたか、と思ったものですが。

 

このまま負けてくれるほど、レギオンは甘くなかったというべきでしょうか。

空を妨害型に奪われた世界では、若い世代には想像もできないものが、存在して……羊飼いを生み出しているように、こう、レギオンども戦争兵器として十分すぎるというか。

自分達にある枷を超越したり、ルールの枠内でルールを逸脱するイカサマみたいな真似をしてくるので、驚かされます。

 

空から降り注いだ災厄によって、確認出来ていた人類の防衛線その全てが後退を余儀なくされて、通信途絶した国すらある。

そんな中で、エイティシックス達の出身地であるところの共和国は、なぜかその被害を受けていなかった。

連邦は共和国に派遣していた派遣軍の撤退支援を行う事に決めましたが……第二目標として、共和国市民の連邦への非難の支援も行う事となって。

 

そこにエイティシックス達の機動打撃軍を派遣する事にあたり、「本国にはそれほど余裕がないか」とリヒャルトが評していたような気分にはなります。

でも237Pで「フェンリル28」の搭乗者が叫んだセリフには、エイティシックスを気遣う気持ちが十分に込められていたりしますし、共和国の市民たちっていう悪例が目の前にあるので、連邦はまだ余裕あるなって思ったのも確かなんですが。

いやまぁ、国を捨てての逃避を行うことになった段階になってすらなお、戦おうとしないというか。かつてエイティシックス達を、違うものとして切り離したように。

内側に新しい敵を作ってそれにヘイトを集めようとしたり、真っ先に逃げようとする高官たちには呆れかえるばかりです。

 

またしても共和国の悪意の前に立つことになった上、今度は彼らを守らなくてはならないエイティシックス達はさぞ業腹だろうと思ったものですが。

しかし戦い続けていく中で、多くを見て学び成長していた彼らは揺るがなかった。

……共和国に対してはある種の諦観というか、シンが言った「もうあいつらに、おれたちが生きる邪魔はさせない。――記憶の中でさえも」って言葉が全てな気がしますね。

心の中で区切りをつけることが出来たのは良かったと思っていて……それだけで終わらないのが、この作品ですよね。

 

この戦争で86区送りとなった人員は多くが死に絶え……その多くが、最後まで誇りを持っていられたか、と問われれば。そりゃ人間なんてそれぞれだから、揺らいでしまった人だっていたと答える他ありませんが。

ああいう形で実例をお見せされるのはあまりにも辛い。その中に、知っている人の残滓を見てしまったのなら、尚更に。

しかも今回、合間に過去のエピソードが挟まれていたんですが……カールシュタールの最期がアレな辺り、まだまだ厄ネタ眠ってる感じですしね……。

約束を交わしている少年少女たちが、少しでも良い未来に辿り着いてほしいものです。