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「コンディションは最高だ。――失望は、決してさせない」

 

ついに下級生リーグの決着がつくことになる、第9巻。

勝ち上がった4組がそれぞれの想いを胸にぶつかる様子はとても熱かったですねぇ。

4チーム参加のバトルロイヤルを勝ち抜いた後の決勝リーグは、各チーム1人ずつ舞台に上がり3分経つごとに参加者が増える形式で。

 

まずオリバー達がぶつかったのは、ユルシュル=ヴァロワ率いるチームでしたが……彼女はやけにオリバー達を敵視していて。

才能の差とか、魔術師の世界になれ合いを持ち込むなとか、言葉でもオリバーを責めましたが……彼は、その程度で揺らぐような覚悟は持ち合わせていなくて。

相手の剣によって負傷しながらも、自身も反撃・反論して、更には彼が積み重ねてきた「経験」によって、対処してのけたのだからお見事です。

しかしまぁ、ヴァロワの経験したことは魔術師として珍しくない事例なんだろうな、って言うのもキンバリーの生徒たちを見てると思えてくるので、闇が深い。

 

一方、一年生の時からは見違えるように成長したアンドリューズ君が率いるチームは、シェラが加入したステイシー=コーンウォリスチームと激突。

父親が運営側に居るためオリバー達と組めなかったシェラは、結構葛藤を抱えていたようですが。ステイシーとフェイが、彼らなりのやり方で成果をだし、食らいついてくれたのは熱かったですね。

 

そしてその熱にあてられたかのように、シェラも全力の一端を披露してくれましたが……いやはや、色々と事情があるため彼女の活躍って実は少ないんですけど、あれだけの技を振るえるとは驚きです。

なるほど、長い付き合いでその才能を知っていたら、そりゃシェラ相手に警戒しまくることになるよなぁ、とアンドリューズの考えに納得できました。最後まであの戦いが見られなかったのは惜しい。

 

全力を出し合った結果、ステイシー隊とヴァロワ隊が脱落し、ついにオリバーがアンドリューズと相対するのは、シリーズの積み重ねがあってこその重みと熱があって良かったですねぇ。……カラー口絵で描きたいのも納得。ある意味アレネタバレなんでは……?

 

そしてこのリーグでの経験から、教師が派遣した分魂であるレイクにも変化が現れたのには驚きました。

単なるスパイからは脱却したと取れますが……その変化によって、更に注目を集めることになるとオリバー達の目的の遂行にも響きそうだなぁとは思いました。

天文学教師デメトリオの描写が増えてますし、次のターゲットになるのかなぁとは思ってますが。

 

しかしリーグの決着がついたとはいえ、それはあくまで下級生のもの。上級生のはまだ続くし、統括選挙の結末だって分からない状況です。

そんな中で終盤に起きたイベントは、波乱を思わせるというか。

これまでも描かれてきましたが、この世界の天体って異界なんですよね。そしてそこから侵略者が来るから、異端狩りが対処に当たっているそうで。

 

渡りや使徒の脅威の一端はこれまでも描かれてきましたが……そうか、あぁなってしまうのか。

彼女ならそうする、と言うのは分かりたくはないけど納得できます。でも、それは傍目に見ても無謀の類でしょう。そして、それによって新たな爆弾が生まれてしまったというか。

どうか後書きに曰く「成り果てる」ような結末にはならないでほしいものですけど。

魔術師の業と言うものを、直視させられることになるのかもしれないと今から震えています。