「随分と義理堅いのですね」
「金も力もねえスラム街のガキが出せるものなんか、義理と命くらいだ」
「他に出せるものが無いからといって、それを差し出す者ばかりではありませんよ。投げ出す者は幾らでもいますが」
アキラの装備更新費用として、都市幹部のイナベが遺物の情報を口外しないという取引を込で20億オーラムも出してくれることに。
それは彼が口にした通り不安の現れであり、シェリルへの減点ポイントだったんでしょうけど。その後でシェリルは、ヴィオラとのやり取りを経て自分の軸を改めて見直し、次の機会にはイナベに「油断できない相手となった」と思わせたのはお見事。
まぁ同時に、裏工作の協力者だからこれくらいはしてもらわないとも思っているので、ここで気を抜くとまた減点入って、最後には切られかねないのが権力者を相手にしてる時の怖い所ですが。
自分が一蓮托生にする相手はアキラだ、というシェリル自身の覚悟を忘れなければ、これからも頑張ってほしいものです。
後ろ盾になっている組織運営はシェリルに。各種交渉に関してはその都度縁があった人……結構な割合で、無理無茶無謀好きのキバヤシに投げているので、アキラってかなり腹芸苦手なんですよね。
でも、これまで覚悟を担当して闘い抜いて来たのは伊達じゃなくて、時間をかければ読み解ける部分も増えるっていうのが見られたのは、成長を感じられて良かった。
今回アキラは、あらぬ疑いをかけられてそれを払しょくする必要が出てきた訳ですが。その言いがかりの中心に居たのが「いずれ殺そうと思っていた相手」だった為、それなりに乗り気で戦闘に参加。
言いがかりを付けられる切っ掛けになったのは、ツバキハラ方面で旧世界製の情報端末を持って帰っていたからって言うのにも気が付いていましたし。
通信障害によりアルファとの接続が切れたタイミングで接触してきたツバキ相手に、隠し事苦手だからアルファについての情報は聞かないし、契約を打ち切るつもりもないって啖呵を切ったシーンは結構好きです。
アルファが自分の信用を勝ち取るために工作してるのにも気が付いてるけど、命の借りがあると覚悟決めてるのは良かったですよね。
あと今回地味に好きなポイントは、遺跡探索中に警備機械が1→2→4と増えていったから次は8体かと思いきや16体きて「機械なんだからそこは機械的に対処しろ!」ってアキラが叫んだシーン。妙にツボに入ったというか、やたら笑えた。
ヤナギサワとネルゴの、旧領域接続者トークとかも好きなんですよね。ああいう情報開示回って楽しくないですか?
ティオル周りの騒動にも、概ね決着をつけることには成功しましたが……その情報を得てるマッドな研究者がいるのが後々どう影響するのかはちょっと不安か。
まぁティオルはかなり状況を動かしたけれど、彼自身も誰かの思惑で動かされてばっかりだったわけで、順当な結末だった気はします。
それよりも今回触れなくてはならないのは、ついに互いに引けない状況でぶつかり合う事になったアキラとカツヤでしょう。
口絵でも描かれていますし、今回のタイトルもまた『望みの果て』で区切りとなるエピソードなのは分かっていました。
WEB既読ではあるものの書籍は結構イベントの流れとかが変わっていて、此処に至るまでアキラとユミナの交流シーンも増えたこともあり、果たしてどんな幕引きになるのかワクワクしてたんですが……そうか、ああなってしまうのか。
これは、なるほど『望みの果て』だわ。これまで感じていた苛立ち任せではなく、お互いに退けないと理解して、終わらせるために戦ったシーンはとても静かで、胸に迫るものがあった。
それでも最後に、アキラが泣けたのは良かったかなぁ……。シズカさんグッジョブでした。
新章となる7巻が今年発売予定と巻末広告あったのは嬉しかったですね。WEBとは決定的に違う道に入ったこれからの物語が楽しみなのは間違いないので。
でも、流石に書き下ろしが多くなるからか、これまでとは違ってサブタイトルとかアオリ文は少な目だったので、続報を待ちたい。