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「騎士とは」

(略)

「たとえ最後の一人になったとしても、勇気と誇りを失わず、国のために剣を振るい、馬を駆ることができる者を言う。残る血の一滴まで使命を果たす覚悟のありようを、人それ騎士道と呼ぶ」

 

BOOKWALKER読み放題にて読了。期間限定タイトルで430日まで。

 

魔術が栄えていたが、その効果を減衰させる物質が見つかったことで衰退しつつある世界。

時代遅れの少女オットー・ハウプトマンは、師匠に託された『大魔術典』に全ての魔術を記し残すために、世界各地を旅していた。

そしてついに空白のページが1か所のみとなったタイミングで、彼女はかつて師匠が仕えていたこともあるリーヴェルヴァイン王国を訪れる。

 

師から聞いた話ではとても良い国だったようですが……しかし、時の流れは残酷と言うべきか。先代国王の退位以来治安の崩壊がひどく、オットーが訪れる時にも今行くのはお勧めしないなんて忠告して来る船頭が居るほど。

実際、オットーは検問の手前で賊に遭遇して追いかけ回されたし、容易く反逆罪が適用し民の処刑を命じる女王の姿を見ることになって。

異国からやってきて怪しい振る舞いをした、とオットーも追われることになってましたが。

 

道中でも出会った眼帯の騎士ジークフリーデに救われて。少しずつこの国や、ジークフリーデの事情なんかを知っていくことになるわけですけど。

 

オットー、良くもまぁこれまでの旅路で生きてこられたなぁって感じの危うさは感じる。活気がなく師から聞いていた話とは違うと思いつつ、目立つ真似するし。……稼がないと先立つものが無いって、世情が怪しい国に来るんなら先に準備しとこう? みたいな気分にはなった。

あと、女王による圧制が敷かれてしまっている国で、異国の話たくさん知ってるんだよって言って「けちんぼな王様が、神様から罰を受けた後に改心し、状況を改善するための芝居を打つ話」を語りだすのも、配慮が足りないのではって気分になるし。

 

でも、時代遅れの魔術にのめり込み、『大魔術典』を完成させようとする姿勢は嫌いじゃないです。今は反魔素材によって抑え込まれているけれど、魔術に対する反魔素材が見つかったように、いつか攻略される日は来るだろうから、その時のために知識を残さないといけない、っていうのは崇高だと思うんですよ。

 

ジークフリーデは、この国で親衛隊の隊長になったくらいの実力者だったが、良い関係を築いていたはずの王女に目を奪われ、反逆者として追われ、それでも騎士としての誇りを貫こうとしてる剣みたいな人だな、と思いました。

2人の出会いによってこの国の事情が動き出すのかと思いましたが…いやはや、1巻終盤の展開には驚きました。メインキャラにそこまでするか、と。良いところで引きになっているので、2巻とセットで読んでほしいですねー。