「少々予言よりも早いか? しかしいよいよ舞台も役者も調った。ピア、私がポッと出の男爵令嬢風情に惑わされる男かどうか、高みの見物をしていればいい」
乙女ゲームの悪役令嬢ピアに転生した主人公。
ゲーム自体はヒロイン1人に攻略対象の男子5人が居るみたいですが、メインで1人を攻略しても残り4人はヒロインに心酔してるため、それぞれの婚約者を振った上で国外通報するエンドになるっていう、いっそ清々しさすら感じそうな逆ハーレムモノだそうで。
主人公は、ゲーム本編開始前の幼少期にそれらの記憶を取り戻したんですが……前世の彼女もまた、恋人に手ひどく振られた傷心の女性で。
再び愛した相手に振られるなんて耐えられない、と婚約を破棄してもらいたいと相手に申し出ることに。
でもそんな明け透けな物言いに婚約者のルーファスは撃ち抜かれ、どうしてそんなことを言い出したのか追求してくることに。
結局隠しきれずに主人公は事情を打ち明けて、彼女の前世知識は神々に刷り込まれた予言として婚約者に理解されることになります。
ルーファスはそんな未来が訪れないように万全の策を講じるから、それが果たされた暁には婚約しようという賭けを持ち掛けてきます。
前世で研究者をしていて、今世も知を重んじる家系に生まれたピアの興味を引く題材を餌にしっかり賭けに乗せたルーファスはお見事。まぁこれはピアが割とチョロイってのもありますけど。
貴族的な謀略はさっぱり苦手な彼女は多くの人々を魅了します。前世の知識を基にした研究――地質学的な学問はこの世界では発展しておらず、先進的って事でかなりの価値を認められて、ピアは博士として認められる功績を挙げたりもしてるんですが。
その辺り本人は自分の好きなことをやり続けてるだけで、あまり意識してない感じ。
年月が経ち婚約者との関係も良好だったけれど、ゲームヒロインが学院に入学してきた事で、他の攻略対象達の様子がどんどん変わっていって。
元々不安定な面があるピアでしたが、ヒロインを目撃したりすると更に不安が加速して。そんな彼女を守ろうとルーファスが手を尽くして、ゲームヒロインの策略にはまらずにピアへの愛を貫いてくれたのは良かった。
まぁピア第一主義だったのもありますけど、彼なりに他の人も救える範囲では救っていて、国王へも意見を上奏していたそうですし、その上で暴走した輩が出たのはもう致し方ないのではって感じ。
「私は約束を果たしただろう?」って、ゲームヒロインが婚約破棄するイベントシーンを、ピアたちが眺めるところがプロローグなので、結末は分かっていて安心して読める作品ですね。キャラの口調があちこち説明くさいとかはありますが、その辺りは好みかなぁ。私はちょっと苦手。