「何も魔物を倒すだけが戦いではありません。家族を守り、子供を産み育てる。それもまた立派な戦いです。それだけで貴方達の生は、私などよりも遥かに価値のあるものになる。どうか今一度考えて下さい。本当にここが……貴方達の命を使うべき場所なのかを」
カクヨム書籍化作品で、作者名が「壁首領大公」で「かべどんだいこう」と読むそうです。
男主人公が目覚めるとゲーム世界の嫌われ者の悪役、偽聖女エルリーゼに転生していた。
この世界では魔女によってもたらされる災厄により困窮していて、魔女を唯一打ち倒すことの出来る聖女はとても大切な存在なそうですが。
エルリーゼは赤子の頃に取り違えられて、間違って聖女とされてしまった存在だった。
本来のゲームにおいては、傲慢に振る舞い続けた結果各地で厄介事が生じて、ヒロインたちのトラウマ要素になったりするそうです。
オマケにメインヒロインの少女も死んでしまう結末ばっかりで、中々ハードな世界だったようです。
そのメインヒロイン、本当の聖女であるエテルナ推しだった主人公は、いつか彼女に聖女の地位を譲ることを見据えた上で、自分磨きをして「聖女」ロールプレイを満喫する事にしてたんですが……。
内心は割と雑なこと考えてるんですが、仮面が分厚くて他のキャラからは歴代最高の聖女だと慕われるようになって。どんどんゲーム時代とは違った形でのイベント発生がしていくのが愉快ですね。
聖女と魔女は、互いの能力以外で傷つくことがないという特性があるんですが。当然偽聖女のエルリーゼにはそんなものはなく。彼女は鍛えに鍛えた基礎ステータスによって、剣を腕で止めても怪我しない、みたいな事するので笑うしかない。
あと特徴的なのは、主人公の意識が不定期に現実世界に戻る事。
パソコンで検索などをすることが出来て、自分の行動によってゲームの展開が代わり、生粋の嫌われ者だったエルリーゼのファンが増えているのが観測出来たり、影響があちこちに波及していくのが面白いですね。
巻末には書き下ろしエピソード「豊穣の聖女~エルリーゼ十歳~」を収録。
この世界、魔女の生み出す魔物の被害以外に、食糧問題も抱えていたそうで。異世界転生して餓死したくない! というエルリーゼの奮闘によって多くの人が救われたとか。
なるほど、こうした功績も積み重なってエルリーゼの名声が高まったんですねぇ……。