タイトル通り、設定開示が面白いオススメ作品を列挙する記事です。
そも設定開示とはなんぞや、ってのがあると思いますけど。世界観が作り込まれていて、それに触れるエピソードやら描写やらが好みに合致した作品、と言う事で10個ほど上げさせてもらいました。

1、『本好きの下剋上』
言わずと知れた名作。WEB完結済みの書籍化作品で、シリーズ全体でかなりの冊数が出てる作品ですね。
小説だけに絞ってもTOブックス刊行の本編が30巻、短編集が2巻、外伝1巻出てますし。ふぁんぶっくも7冊。ジュニア文庫版なんかもあるし、コミカライズも第一部が完結しましたが、2部~4部が同時進行してますし。

本好きで司書になろうとしていた女性が亡くなり……異世界の平民、病弱なマインとして転生。
この世界でも本を読みたいと思う彼女でしたが、紙は高価で本を読めるのは貴族様だけ。
それで諦めずに植物紙を作ろうとしたり、前世知識を活用して少しずつ味方を増やしていきますが……マインは膨大な魔力を持っていた事もあって、厄介な貴族に目を付けられたりもします。

物語が進むのに合わせて少しずつ彼女の立ち位置は変化していくんですが、それぞれの場所に適応する努力をしつつ、本好きとしても自重しない在り方は結構好きです。
マインの知識によってつくられていく成果物も見ていて面白いですが、彼女が転生した世界ユルゲンシュミットはかなり作り込まれていて、新規SSが出る度に驚かされる事があります。
書籍版だとプロローグやエピローグ、巻末描き下ろしに他者視点があったりして本に一直線なマインが見落としていたり、周囲の人が彼女に見せないようにしていた世界の一端が見えて面白いですよ。



2、『フシノカミ』
オーバーラップノベルスからの書籍化作品で、7巻完結。
WEBでは断章として番外編のようなエピソードが不定期に更新されてます。

前世らしき知識を持つ、寒村の農民出身の子供アッシュ。
彼は豊かな世界で生きた知識があるために、たかが風邪で人が死んでしまうような現世の貧しさに絶望していた。
けれどある日。村長夫人が朗読会を開いてくれた事で、彼に火が付くわけですね。

アッシュが「豊かな生活の記憶」を持つように、この世界はかつては栄えていて……過去のすべてを窺い知ることは出来なくても、その断片として書物は残されていた。
だから文字を学びそれらの本を読み、知識を武器に今世に豊かさを取り戻そうと走り出すことを決めた。
力強く夢に向かって走る彼の姿は眩しく、その光に惹かれる人も大勢いるのがいいですよね。
前世知識はあれど一足飛びに全てを解決できるわけではなく、調べ物をして実験して、着実に進んで行く作品です。……けん引してるアッシュ君が夢への暴走特急なので、方法は堅実でも速度がおかしいんですが。



3、『魔王と勇者の戦いの裏で~ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です~』
クソ長サブタイトルが内容を全て含んでる、WEB発作品。
オーバーラップ文庫より既刊2巻。
で、WEB244話にて3巻の制作も決定したと報告がありました。ご家庭や制作の事情もあって、気長に待つフェーズですが、決まってるだけで心持ちが違うのでうれしい。

復活した魔王によって危機が訪れた世界を、勇者が救う。
そんな王道設定のRPGゲームの世界に転生した主人公ヴェルナーですが……彼が転生したのはゲーム時代には登場した覚えがない、いうなればモブだった。
さらに彼が住む王都はゲームイベントで魔族から襲撃を受け、かなりの被害がでるのも確定している。
そんな世界で生き延びるべく奮闘する話ではあるんですが。

ゲームだとスタート地点近くには良い武器ないよな、とか。ワープアイテム置いてない所もあるよな、とか。ゲーム的にはそうなるよね、みたいな状況に作中で理由を付けてるんですよね。
それが結構好みの味付けしてるので推してます。



4、『化学で捗る魔術開発』
過労死した化学者が、魔術のある世界に転生。
独自の理論で修行してどんどん才能を伸ばしていくんですが、それを独占せず双子の弟や幼馴染の少女などと共有して、一緒に進んで行くのがいいですね。
途中、学校で接触してきた女の子にもその知識を与えていくんですが、彼女がその中で零した「種を蒔いていたのね!」という台詞が印象的ですね。

前世知識を活用しつつ魔法で今までになかったものを作ったり。身体を鍛えて、出来ることを増やしていく物語です。
Mノベルスから2巻まで刊行されてたんですが、多分打ち切られたんですよね……悲しみ。
ですが不定期でもWEBの方は更新を続けてくれてるので、続きが気になる方はそっちも読んでください。





5、『竜と祭礼』
GA文庫大賞、第11回奨励賞。全3巻。特に1巻の完成度が高くて気に入っている作品。

師匠の遺言によってユーイという少女の持ってきた魔法杖の修理をすることになった、半人前の職人であるイクス。
姉弟子の力を借りつつ杖を調べてみると、1000年以上前に滅んだはずの竜の心臓が使われていた。
修理するためには新たに竜の心臓を得る必要がある。しかし、1000年も前に滅んだ存在の素材をどう見つければいいのか。
失われた竜を探すとても静かな物語です。資料に当たってるシーンが多いですしね。でも、骨太なファンタジーって感じがして、答え合わせのシーンとか気に入ってます。
2巻以降も不器用なりに杖と向き合っているイクスが、とても職人って感じがして好き。



6、「-world memoriae-シリーズ」
古宮九時先生の描かれているシリーズで、書籍化しているのは『Unnamed Memory』と『Babel』の2作。WEBのみだと『Rotted-s』などがあります。
両方とも電撃の新文芸から刊行されていて、『Babel』は4巻完結。『Unnamed Memory』は本編が6巻で完結し、後の時代を描く『Unnamed Memory -after the end-』が1巻刊行されています。

『Unnamed Memory』は呪いを受けた王太子オスカーが、最強と謳われる魔女のティナーシャに解呪を依頼に行くところから始まる、最強の対を描くファンタジー。
『Babel』は『Unnamed Memory』から300年後の未来、異世界転移してきた女子大生の雫が、魔法士のエリクと出会い帰還の術を探す旅をする話。

神々の時代に5つの大陸に分かれた世界という設定があって、作品ごとに舞台となる大陸だったり時代が違っていて、微妙にリンクしている所なんかもあってそこに気が付くとより面白くなるところが好きです。





7、『おかしな転生』
TOブックスより、21巻まで刊行中。
パティシエをしていた主人公が亡くなり、異世界に転生。
魔法などがある世界で貴族家に生まれたもののその領地は荒れ地に近く、彼が欲する甘味への道程はあまりにも遠かった。
それでも諦めずに甘味に向かってガンガン突き進んでいくお話。

主人公のペイス、執務よりお菓子作りのほうが好きで、上手い事言い訳できるなら速攻で厨房に籠ろうとするし、交渉の際に甘味のネタ提供されると獲得する方向に路線切り替えたりするのが、一貫し過ぎてて笑えるんですよね。
でもそれだけじゃなくて、扱えるようになった魔法のトリッキーな使い方を見出して、貴族としての武器にしてるし。戦や領政においても実績を上げているので、しっかり貴族やってもいるんですよね。
お菓子関連の知識も多いんですが、それ以外にもこの世界ならではの設定がされていて面白い作品です。アニメ化決定したのには驚きました。



8、『予言の経済学』
レジェンドノベルスから2巻まで刊行された作品。WEBは280話で完結済み。
打ち切り……というか、レジェンドノベルスってレーベル自体が消えてしまった悲しい例。ちなみにレジェンドノベルス、イラストは表紙のみで挿絵がないタイプのレーベルでした。
割と好みの画風だったので挿絵でも見てみたかったなぁ、とは思いました。

経済学部の院生だった主人公が、異世界に転生。
行商人の息子リカルドとして知識を活かしつつ大商人に潰されない道を模索していた彼と、その血筋故に迫害されていた「予言の聖女」アルフィーナが出会い、彼女が見た不吉な予言を解き明かそうとするのが第1巻。

魔力や魔獣と言ったファンタジー要素がある上、過去に大規模な転移でもあったのか地球に似た植生のものも存在する。
そんな世界でリカルドの知識を使った分析をしたり、経済の知識を使って筋道を付けていく流れが好きです。
WEBの後日譚『悪魔の神器』とかが特に面白いんですよ。本編が大変な分、概ね平和なエピソードは刺さる。





9、『エリスの聖杯』
GAノベルから4巻まで刊行。本編が1~3巻で区切りとなったあと、電子のみで4巻が完全書き下ろしで刊行されましたね。
これまでに挙げた作品は、作り込まれた設定や世界観について紐解かれていく部分が特に面白かったのですが、この作品で開示されていくのは「過去に起きた事件の真相」なので、どちらかと言うとミステリーの味わいが強い。

婚約破棄された上に相手に追及されて窮地にあったコンスタンス・グレイル。
彼女を救ったのは10年前に処刑された悪役令嬢、スカーレット・カスティエルの亡霊だった。
その対価として「スカーレットの復讐の成就」を手伝わされることになったわけですが……調べるほどに危険に迫っていく、というか。
貴族同士の暗闘だったり、暗躍している勢力があったりして、ハラハラする部分もあるのですが彼女達が辿り着いた結末をどうか見て欲しいんですよ。



10、『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。』
MF文庫Jより4巻刊行されて区切りとなったシリーズ。
現代ラブコメっぽい雰囲気を醸してますけど、この作品には「星の涙」という「2番目に大事なものを対価に、失ってしまった1番大事なものを取り戻せる」アイテムが登場するので、SF(すこし・ふしぎ)系の要素もブレンドされています。

主人公はかつて「星の涙」絡みで失敗して、同じ失敗をする事が無いように他の「星の涙」持ちを止めようとするんですよね。
でも、「2番目に大事な物もの」を捧げてでも願いを叶えようとする人が、簡単に止まれるはずもなく。願いと願いがぶつかり合う事になるわけですが。
「星の涙」を持つヒロイン達が魅力的なので、各巻しっかり面白かったです。私は小織派なので3巻まで読んでください。

この作品の紹介からはちょっと外れるんですが、作者の涼暮皐先生が書かれる作品は世界観を共有してるんですよね。
不思議な行商人ナナさんが、別作品のキャラと知り合いだー、みたいな設定があったり。
過去作品『ワキヤくんの主役理論』(MF文庫Jより2巻)とか、カクヨム連載の現代作品だと大宮を舞台にした作品がいくつかあるんですが、「ほのか屋」っていう共通の喫茶店が出て来たりするので、作品網羅してると面白さが増しますよー。



番外編、『シャングリラ・フロンティア』

小説家になろう発のコミカライズ。ラノベ的な内容ですが、書籍化されずにコミカライズされた結構珍しいパターンのように思います。
クソゲーマニアの主人公が苦労してクリアした後、知り合いから「たまには神ゲーしてみれば」と勧められて手を出したのが「シャングリラ・フロンティア」。
プレイ開始して早い段階で「夜襲のリュカオーン」というユニークモンスターから呪いを受けて……その打倒を目指して、ゲーム攻略に勤しむ話。
世界観的な要素とかロールプレイで変動する部分があって、ゲームとしても自由度高くて凄いんですよねー。

「シャングリラ・フロンティア」っていうゲーム一本ではなくてリアル側の出来事も描きますし、主人公が熱中してるクソゲーの数々だったりをプレイする場面もあったり、楽しめるネタが多くて好きな作品です。
そもそもラノベじゃないので番外に置きましたけど、面白いので是非ー。