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「ううん、世界は動くよ。小さな種の一粒が豊かな食卓と元気な毎日に繋がるように、そんな一日一日がいつか歴史になるように、大きな変化は小さな変化から始まるの。世界派そんなきざしで満ちているのよ」

 

BOOKWALKER読み放題にて読了。期間限定タイトルで930日まで。

完結巻。WEBだと確か駆け足で纏められた北部と南部の戦いについても描きつつ、終わり方はほぼ同じで、マルコの戦いはまだ続くぜENDなんですよねぇ。

苛烈な彼の旅路をまだまだ見たかったような、タイトルにある火刑戦旗が掲げられたところで終わるのが綺麗な様な、物足りなさと満足感が同時に来る不思議な気分。

WEB85話で登場する巻物のエピソードが好きなので、その辺りが描かれなかったのは残念ではありましたね。

 

教会は秘された歴史を知るがゆえに、行禍原での王国と帝国の戦争が途絶えぬように尽力してきた。

それは直近の戦争で、王国に勇者を見出して反攻を成功させたことからも明らかでしたが。

勝ち戦だったところに水を差された帝国は当然面白くないわけで。今度は教会に根回しをしつつ、油断を誘って迅速果断な勝利を掴もうとしたのはすさまじい執念だったといえるでしょう。

ただ、勇者も魔人サロモンも死んだあとの王国にマルコが居て、彼に協力する人々が居たことが、帝国の思惑を打ち破っただけで。

 

読者目線ではマルコ=サロモンの転生者である事はほぼ明らかでしたが、ついにかつての彼を知るユリハルシラ侯爵と顔を合わせることになって。

サロモンが焼かれることになったのは、彼自身も受け入れていたことだったというのが描かれたのは重い。

彼は自身が火刑に処されることで戦乱の火を一度収めようとして、実際それは成功したわけですが……あと35年は保つと思っていて、叶わなかった。

一方で教会の予想よりは開戦が遅かったそうなので、サロモンの犠牲が無駄なわけじゃないわけで、中々に悩ましい。

 

第一王女視点で描かれて、暗躍する教会関係者らしさを見せていたベックとマルコの会話が、中々に痛い。彼もまたサロモンを知るものであったとは、というのがなぁ。

マルコが見据えていた遠い目標の正体についても明らかになりましたが……思った以上に、大それたこと考えていたんだと驚かされましたね。

彼なら果たしてくれるかもしれない、と思えるのが好きですが。……あぁ、また多くの血が流れていくのだな、というのがどこか寂しい。