「そもそも、らしいとからしくないとか、本当は他の人が決められることじゃないと思うし……その人がやりたくてやってることなら、全部その人らしいんじゃないかな」
「……うん。そうかも」
KADOKAWA刊行のアンソロジー『5分で読書』の1冊。
アンソロなので、テーマに沿って複数作家さんの短編が掲載されているのが基本になるわけですが。
この『全力の「好き」をキミにあげる』は1冊まるごと、藤崎珠里先生の作品で構成されています。
小説家になろうで両片思い系の恋愛短編を多数投稿してる作者さんで、以前から読んでいたのもあって、書籍化はめでたく嬉しいものですね。
2作だけ前後編の構成で、残りはそれ単体で読める形なので、1編ずつじっくり読んでいく形をとれるのもいいですねー。
糖度高い作品過剰摂取しすぎると倒れちゃいますからね、自分のペースで読めるのはいいわ。
好きな女の子と共通点が多いから、と相談相手になっているけれどそれなら自分の事を好きになってくれてもいいのに、と悩む少女を描く『鈍感なのは』。
一目ぼれした勢いで告白して、それ以降もアピールを続けた少女の想いの強さが語られる事になる『伊吹くんに、毎朝一番におはようって言える人になりたいです。』
『片思い中の幼なじみとの添い寝、その顛末について 前/後編』というタイトル通りの作品などなど。
どの物語でも恋心を抱えた少年少女が可愛らしく、読了後幸せになってほしいなと思える要素で溢れている、良質な短編集でしたね。
特に気に入ったのは『㊙委員長の楠田くんは、ファミレスでバイトをしている』で、バイトしている委員長を発見してしまい通いづめていた早川さんが、途中でちょっと冷静になって距離を取ろうとしたら、逆に委員長から踏み込んでくる流れが良かった。
もう一つの前後編構成『どの本にもいない』に出てくる読書好きの少女、結音ちゃんも小動物見てるような可愛さがありました。
いやぁ、甘かった。どの作品も満喫しました。