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「ならよかった。まだあなたの役にも、あなたが大事にするこの街の役にも立っていないからな」

(略)

「充分よくしてもらってる。だから……きっとここに帰ってきてくださいね」

 

WEBで大好きだった作品の書籍化!! WEBでいう第二譚まで収録されていますよー。

もう楽しみで楽しみでならなかったんですが、その期待に応えてくれる最高の1冊でしたね。

これ単体で読み始められる異世界ファンタジーであり、帯に在る通りの異類婚姻譚でもあります。1巻だとまだ出会ったばかりではあるんですけど、この時期のもどかしい距離感もやっぱりいいなぁ。

WEB既読でしたが加筆修正入ってて初見のエピソードがあったし、表現も分かりやすくなっていたので、とても楽しかったです。

 

古の時代に世界を救った神は、対価として人に「酒」と「音楽」と「人肌」を求めた。

享楽街アイリーデという、その伝統を今なお継承し続けている場所に王都から主人公のシシュがやってきた事で物語が動き始めます。

この世界では人の集まるところにどこからともなく生じる「化生」という赤い目の怪物が存在して……。

シシュはそれを見ることが出来る素質があったため、アイリーデで欠員が出た「化生斬り」の応援として派遣されることになります。

 

そして彼は化生斬りの同僚となるトーマから、神話正統の妓館「月白」の主でありこの街でただ一人「巫」と呼ばれる異能持ちの少女サァリを紹介されます。

化生斬りの仕事を手伝う一方で、彼女自身もまた娼妓としての顔を持つわけですが。

神話に由来する「月白」は女の方が客を選ぶ、という伝統がある店であること。月白の主である彼女が選ぶ客は生涯でただ一人であること、などなど。

歴史が長い分、不文律なども多く……シシュは王都とは何もかも違うこの街に馴染もうと奮闘していくわけですが。

 

タイミング悪くというか、良くというか。アイリーデで化生関連の騒動が増え始めて……。

この街が「神話の伝統を継いでいる」という事の重みと向き合っていくことになります。

堅物で真面目なシシュと、月白を継いだばかりで頑張ろうとしてるサァリのやり取りが本当に微笑ましくて良かったです。

第二譚だとサァリの持つ別の顔を見る事が出来たり、シシュが珍しく感情を見せてくれるのも良き。
この国の王が策を巡らせる描写も見られるんですが……秘密主義で目をかけてるシシュをからかってくるのはちょっと苦手ではあります。いいキャラしてるんですけどね。
だからシシュが感情的になったシーンは、やっぱり多少はそういう気持ちにもなるよね! って思いながら読んでました。333Pあたり。
まぁシシュ王への忠義は厚いんですけど。100%肯定するのではなく、思う所があるのは人間味あっていいなぁと思うのですよ。

 

紙版初版だと帯にQRコードがついていたり、アニメイトとかで買うとシリアルコードが貰えて、挿絵の在る部分にボイスつけた「挿ボイス」が聞ける特典があるんですよ。

それで聞くとシシュが格好いいし、サァリが本当に可愛くて可愛くて仕方がない。アンメモみたいにオーディオ化してくれないかな……。
是非2巻以降も出て欲しいものです。コミカライズも決定してるので、続刊でないなんてことはそうそうないと思いますが。