「俺は無駄な損害は出したくない つまり――」
「犠牲者を出さない それが今回の伯爵家隊の目的だ」
オーバーラップ文庫より刊行されている作品のコミカライズ。
「復活した魔王を勇者が倒す」王道RPGゲームの世界に転生した主人公。しかし彼の転生先は、ゲームイベントでの登場がないモブ貴族ヴェルナーだった。
父が典礼大臣の伯爵で、立場もしっかりしてるんですが……勇者目線の物語じゃ、式典を管理する文官寄りの家系とかそうそう見えないか。
彼の住む王都はイベントで魔族の襲撃を受けて壊滅することになっていて、彼はそれを回避するために自分の身体を鍛えたり、ゲーム世界の知識を活用したりしていく……というのが大まかな流れです。
1話は、本編の時間軸でいうとちょっと先のことなんですよね。
勇者としての成果をあげた友人マゼルがパレードの目玉になってる傍ら、ヴェルナーは警備に駆り出されて大変です。
そのあと街の酒場で落ち合って互いの無事を祝ってる当たり、仲がいいですけども。
最初は勇者に近づこうとしていなかったヴェルナーでしたが、「ゲーム本編開始前にどうにかなることはないだろ」と思ってたらヤバそうな状況になってフォローに入ったりしてるので、面倒見がよい。
書籍書下ろしエピソードをコミカライズにあたって再構成してたり、意欲的なんですが……1話の最後、雨のシーンは何?! 知らない話なんですが!?
書籍は3巻発売決定してるみたいなんですが、原作者さんの私生活が忙しかったりしてWEBの更新ゆっくりになってるところなので、早くそこまでたどり着いてほしいような、見るのが怖いような。
そうやってヴェルナーと勇者の交流を描いた後、ついにゲーム本編が開始。魔物が暴走するスタンピードが発生し、騎士が動員されることになって。貴族家として、ヴェルナーのところからも兵を出す必要があり……ここでも生き延びるために準備して、実際にそれが生きてくるんだからなによりでした。
魔物がいるファンタジー世界だからか、脳筋な人が多いというか。
武門の貴族は文官を軽んじる傾向があって、スタンピード直前にあいさつに行ったヴェルナーを歯牙にもかけない党首と、軽視する嫡男が出てきたりしますが。
「この世界ではこういう考えが当然で悪意はない」と受け流せるヴェルナーはえらい。気疲れはしてましたけどね……。
スタンピード時とか、魔物の群れや騎士の戦闘とかが出てくるんですが、画風がそのあたりのシーンに合っていて、良いコミカライズになってると思いました。
巻末には書下ろしSS「天才とマナー」を収録。
ゲーム本編開始前の、平和だったころのヴェルナーと混ぜるの平和な学園模様を描いてました。