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「僕は……間違ってなかったかな」

「目の前で春瑠センパイが笑っているのが、その証拠じゃないですか」

 

主人公の白濱夏梅には、昔からずっと好きな人がいた。

広瀬春瑠。年上のおねーさんで、幼かった彼が憧れる存在だった。

しかし、春瑠は春瑠で片思いをしていて……しかもその相手は梅の兄である晴太郎であり……彼が一年前に亡くなったことで、成就することも思いに区切りをつけることもできずに引きずることとなった。

夏梅もまたそんな春瑠を放っておくことができず、なんとも言えない距離感での付き合いが続いていた。

 

春瑠が大学進学し上京した関係でしばらく会っていなかったようですけど、久しぶりに彼女が帰省してきたことで状況が動き始めることになります。

それは2人や、周囲の人々の関係によるもの……だけではなく。

陽炎の夏という不可思議な現象がかかわっていた。大切な人の幻影が見えるようになり、それにつれていかれるように死んでしまう。

春瑠は帰省してからその現象に遭遇した人のように「なにかを探してる」素振りがあって。

夏梅が引き留めようと奔走することになります。

 

……そんな夏梅相手に片思いしてる、部活の後輩少女・冬莉もいて。彼女からのアドバイスとかもあって、問題解決までたどり着けたわけですけど。

叶わない片思いに縛られていた夏梅と春瑠だけでも、2人にとっては大騒動となったわけですし。冬莉が思いを抱え込んでいる以上、またなにがしかの現象に襲われそうなのは怖いところです。

 

過去にとらわれていた少年少女が、それを振り切って前に進むことになる。構成が美しい作品だとは思いました。

ただ、夏梅たちがとらわれている原因である亡くなった晴太郎がどうにも好きになれなくて、モヤモヤする部分はあった。厳格すぎる父と反発して彼が家を出たことで、弟に重石がかかるようになったこと。

いざ対面したときに夏梅の神経逆なでするような物言いをしていたところとかは嫌いだなぁ。限界寸前の状況で連れ出しに来たり、弟を思う気持ちはあってそれの発露するのが苦手だったんでしょうがそれにしたってなぁ……みたいな気分になる。