「前の俺はただできないと決めつけて諦めていた。でもその実、何も努力なんかしていなかったんだ。あえて言おう、今までの俺は愚かだったと。だがその十六年間の無念に、今の俺が報いてやる。魔法の方程式とやらを奴らにつきつけてやろうじゃないか」
ナラザリオ伯爵家の長男として生まれたロニー。
しかし16歳となった彼は、両親からも使用人からも期待されない「欠陥品」扱いをされていた。
それはこの世界では誰もが魔力を持ち、規模の差こそあれど魔法を扱えるはずなのに、彼はそれすらもできなかったから。
それでも弟は慕ってくれていたし、期待はされてないにせよ食事等の世話は最低限してくれていたので、なんとか生き延びていた感じですが。
ある日、階段から落ちて頭を強かにうち……科学者として生きた前世の記憶を取り戻す。
そして彼は弟の協力を得ながら、「この世界の魔法」を科学的に分析しようと試みることにして。
魔法が使えないのにも関わらず結構真に迫った仮説を立てるところまでは行ったようです。
ある程度研究が進んだ折、ロニーは領地にある祠で精霊セイリュウと出会います。
本来人には見えず聞こえず触れられないはずの存在だった精霊の存在を、ロニーはなぜか察知することができて。
この世界に魔法を与えたとされる精霊の視点から、ロニーの論理が間違ってないだろうとお墨付きをもらえたのは良かった。
更に、ロニーが魔法を使えないのは、あくまで彼自身の肉体に魔力の出口がないことが原因であり、「出口」となるものを用意することで魔法を使えるようになるという知識まで与えてくれたのはありがたかったですね。
ロニー自身が魔法を扱えるようになったことで、この世界にこれまで存在していなかった「氷魔法」を実用的な形にすることに成功したわけですし。
彼を認めてくれる人が増えてよかったと思う一方で、父の周辺で怪しい動きがあるのが気掛かりですね……。