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「ああ。だからお前のことも否定しない」

(略)

「だが王とは……民を守る精神そのものだ」

 
皆さん帯を見ましたか、帯を!! 驚きのアニメ化決定ですってよ!! 
しかも2023年公開予定とか楽しみすぎる。生きる喜びが増えました。

Unnamed Memory』の後日譚、第2編。

逸脱し、外部者の呪具を探し続けている彼らですが……なかなかその成果は上がらず。

序盤も「まぁまず違うだろうな」と思いつつ調査に行って、やっぱり違ったけど別の問題発生したりして。必要以上の干渉は避けようとしつつも、ほどほどの着地点を模索したりしてるのは真面目だぁと思います。


 

ティナーシャがこの世界の呪具として成立した2人が得たのが、完璧な不死ではなく一度死んだら時を置いてから覚醒するタイプだったのは、人としての感覚を忘れないためじゃないかと考察していましたが。

実際、それと時を同じくして彼らの血が継がれていたファルサスが倦んで、直系王族を殺そうとする廃王ディスラルなんて存在が玉座に着き、多くの血を流すことになるんだから、結構的を得ていそうです。

 

ディスラルと対峙したオスカーが、久しぶりに王としての顔を見せてくれましたが……これ、のちに精霊たちにも言われてますがティナーシャが命を落としたからっていうのも理由としては大きそう。

彼は公私を切り分けて考えられる王の資質を持っており、彼にとっての「私」の領域はすなわちティナーシャのことだった。彼女がいないからこそ、「公」の性質が強く出てる感じはしたなぁ……。喪失してもなお否定しない王の在り方が尊くも悲しい。

 

カルに喪失経験した後のオスカーに人間らしい感情はすべてティナーシャ宛だったんだな、って言われてるの割と新鮮というか。そこそこ付き合いあるはずなのに。

ミラもそうですけど、ティナーシャの傍にいるオスカーばかり見ていたせいか。

あぁ、そう考えると『変質の旅路』において精霊たちが賭けに乗ったの、ティナーシャの対であるオスカーの印象が強すぎたからなのかもしれない。

 

ミラの言う通り、もっとティナーシャに「私」の感情のほとんどを注いでいたことをティナーシャにアピールしてください……。それで助かる読者の命(私)があるんです。

後にリースヒェンに服買ってる時とか、今までも何度も服を贈ったりとかで、態度で示してると言われればそれはそう。ハッキリ口にしないのが彼らしい、という論にも納得できてしまうので、こう……もどかしい気持ちにはなりますね。

 

ティナーシャを喪失してから、リースヒェンとなった彼女を見出し保護するまでの『無名の薔薇』扉絵で、ナーク頭の上にのせてたのが可愛かったですね。

そののち、一緒に森の屋敷で過ごしている日常を描き、東の大陸に向かって。冒頭の魔法大陸地図のところに、大陸分割神話のことが描かれてましたし、別大陸に足を運んで文化の違いが示されたことで「神」についての記述も増えていた印象があります。

「―world memoriae―」シリーズの『Babel』や『Rotted-s』と同時代ということもあって、歴史の裏側で彼らが何をしていたのかが描かれていて今回も面白かったです。

Unnamed Memory』しか読んでおらず、ちりばめられた情報が気になる方はあとがきにもありましたが、『Babel』や『Rotted-s』もぜひ読んで下さい。