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「人間が召喚した勇者には敵わなかったっていう歴史がありますからね。力だけではどうにもならないことは、みんなわかっているんです」

「勝った帝国の方は、逆に力がすべてになっちゃってますけど」

「どこも、思うようにはいかないものですね」

 

武勇を貴ぶドルガリア帝国では、文官等の立場は低かった。

その中で公爵家の長男でありながら、錬金術のスキルしか発現しなかったトールは実家からすると邪魔で仕方のない存在で……。

家を出て、母方のカナン姓を名乗ってひっそりと生活していたようですが、それすらも気に食わなかったようで、現在停戦状態の魔王国への生贄として放逐されることに。

帝国側のほとんどは人と違う容姿をしたエルフや、ミノタウロスなどの存在が住まう魔王国の住人を恐れており、引き渡しの際も怯えが見えるほどでしたが。

トールは魔王国の人々と真摯に接して、信用を勝ち取っていくことになります。

 

なんでもかつて、異世界から召喚された勇者によって魔王が討たれ、魔王国の人々は現在の土地に追いやられた過去があるらしくて。

勇者を擁していた帝国側は、「魔王すら撃破した勇者のような武功こそすべて」の実力主義に傾倒して。

逆に打倒された側の魔王国は「人間侮るべからず。交流を持つことで、相手を知るべき」と柔軟さをトップが持つことになったというのは皮肉というか。

 

公爵家に疎まれていたトールは、その実績こそ表に出なかったものの聖剣の修復すら可能な一級の錬金術師だったようですが。

それすら知らず放逐する公爵家の無能さよ……。素のスペックも高かったのに、魔王国に踏み入れて、帝国では薄い闇属性の魔力に触れたトールの錬金術スキルは、「創造錬金術」へと進化。

 

アイテムの外見や効果についての情報をもとに同等のアイテムを作り出す能力、らしいです。さらにそれを活用するための、魔力から素材を作ったり、物質の合成ができるスキルや属性付与にアイテムの情報を鑑定できるスキルなども獲得して……。

文字通り新たなアイテムを「創造」できる領域に到達したわけです。そんな彼が、異世界の情報が載った「通販カタログ」を発見して。

 

かつて魔王を討伐した勇者が暮らした世界には、こんな便利なアイテムがあるのか! と誇大広告気味のうたい文句を純粋に信じて、スキルで再現してのけるんだから常識ブレイカーも大概にしろというべきか。

まぁそのスキルで魔王国で出会った人々の悩みを解決し関係を深めていき、楽しい時間を過ごせているのですからヨシ。

……たまに挟まる帝国側の描写見ると、あっちに良い人材がいないので今なら魔王国が攻めれば勝てるのではないかとすら思えてきますが。どうなるやら。