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「ティスカ姉……本当? 迷惑かけてない?」

「迷惑なんて、全然ないね! むしろ、エルネのおかげで日々が充実してるね!!」

 

高等魔法学院で学んでいたティスカは、魔法に優れた才能を持つ少女だった。

実家に眠っていた治癒魔法の魔導書の解析を進めていたところ、親しくしている少女エルネが負傷し……不完全な治癒魔法を発動。

無事にエルネは救えたものの彼女は後遺症で魔法が使えなくなってしまったし、ティスカも事故から2か月寝込んで単位不足で留年し、決まっていた就職も流れてしまった。

表紙の通り片方の目の色と、髪がひと房白く色が抜けてしまったのもティスカの後遺症のようですが……元が明るいピンクなのでひと房白いのはパッとわからんな……。

 

翌年無事に卒業したティアセは、かつての家業であった「ペリアプト魔導書工房」を復活させることに。

今の主流である画一化された魔導書ではなく、オーダーメイドタイプの魔導書を作るスタイル。魔導書に使う素材の影響も大きいし、刻む呪文の設計にもセンスが必要だしで、廃れたのも無理はない気がしてきますが。

魔導書工房を廃業した後に始めたパン屋では、その時に得た知識を基にしたパン作成用のスペルが今も使われて好評を博しているんだから、使い方次第な気もしますけど。

だからこそ、ティアセも工房を復活させるって決断できたんでしょうしね。

……魔法研究大好きな魔法バカだから、っていう一面がないとは言いませんが。

 

友人のエルネの協力を得て経営してる工房に、学生時代の同期でありティアセをライバル視もしている魔法系貴族家の令嬢リセが入りびたるようになって。

3人娘が姦しく工房経営していく話ですね。最初はパン屋の評判の方が強くて、なかなか依頼が持ち込まれず、ティアセも新作パン用の呪文作ったりしてましたけど。

傭兵活動中の人物や、旧知の農家から依頼が持ち込まれて、ティアセ製の魔導書が人目に付くようになったので、今後に期待が出来そうではあります。

 

魔法でパンを焼いてるパン工房ペリアプトは、日に何度も焼き立てパンを提供できる人気店らしいですし、農家のザインが頼んだ耕耘と殺虫の魔導書はマジに家宝になるんじゃないかな……。

パン工房は魔法が使えないと後継者になれない問題を抱えたりしてるわけですけど、何代も続いてるわけですし。ザインは目につくぶん盗難の警戒をしなきゃならないのが大変そう。

 

リセ伝いではありますけど、貴族からの依頼まで来たわけですしね。……別の家からの妨害工作まで発生したりもしてましたが。

そこまで気にせず完成にこぎつけていたのはお見事。どちらかというと、エルネが感じていた負い目をティアセにどう伝えるかという部分が一番の山だったんじゃなかろうか。

でも3人が仲良く経営してる風景が楽しそうで、心が弾むのでオッケーです。