「エルア様こそ、よろしいのですか。今まであなたがどれほどあの恩知らずどもの手助けをしてきたのか、誰にも知られないまま姿を消すことになるんですよ」
「当たり前でしょ? 私は推しが幸せになってくれるんなら、それ以上のご褒美はないわ!」
推しの為なら課金を厭わないタイプのオタクだった、主人公。
彼女は好きだったソシャゲの悪役令嬢エルディア・ユクレールに転生して。
自分が起こす事件を解決していくことで、メインキャラの勇者や聖女が成長することを知っていた彼女は、「推しの活躍を見るため」悪役として活動することを決めて。
とは言えいつも予定通りに行ったわけでもなく。最推しの暗殺者キャラ、アルバートの幼少期の姿を見たときに、救わずにはいられなかったり。
他にも勇者の村が滅びるなどの悲劇を回避しようと試みたり、エルディア自身が実行犯となる事件現場に行かなかったりしたのに、村は滅び他の誰かによって事件は起こされた。
シナリオの強制力が働いてイベントを押し付けてくる一方で、ゲーム時代には存在した技術がなかったりするなどチグハグな世界になってるんですよね。
なのでエルディアは、推しの活躍やイベントスチルを見たいがために、別名義で商会をつくって技術革新をする一方で、悪役としての振る舞いもして主要キャラの成長も促してきたわけです。
そしてついにシナリオ通り、婚約破棄されて表舞台から退場することができたわけですが。
……それも想定内だったので、別名義で動かしてた商会のトップに座って、エルアという偽名で自由に推し活動してるので凄く生き生きしてますね。
本来は暗殺者として活動し聖女たちに救われるはずだったアルバートは、エルディアの執事としてついてきちゃうし。
なぜか勇者や聖女に懐かれていて、婚約破棄後のエルディアを助けようと動いたりと、エルディアの知るシナリオからは乖離しそうでしていない、ぎりぎりのバランスでシナリオ進行してる感。
まぁ主要キャラには敵わないと自覚してるエルディアも、自己研鑽を怠ってないみたいですしこの勢いのまま多くを救ってくれそうだと思えるので、応援したくなる作品でしたね。
定期的に推しが尊くて悲鳴を上げる重度なオタク主人公ではありますが、「推し」に対して素直で見てて面白い主人公でした。