「人間は足りない生き物です。完璧ではないからこそ、特異不得意が発生する。しかし、それでいいんです。他者が他者を補うのが人の在り方なのだから」
(略)
「だからこそ――他者に頼らず、自分の力だけを頼みとする人を皇帝にするわけにはいきません。力を貸してもらえますか? ミアさん」
アルは敢えてエルナやセバスと言った、味方してくれる戦力を聖女を救いに城を出たレオの応援に派遣して。
敢えて弱みを見せることで敵の警戒を薄れさせようとしたわけですが。その中で出来る範囲で人員を動かし、味方勢力を守ろうとするあたりがアルらしい。
これまで接点の薄かった弟ルーペルト皇子の母から、陣営に与するから助けてほしいと依頼を受けて、戦力が十分ではないからと断ろうとしたところ、トラウ兄からの援護も飛んできて。出涸らしと侮られつつもできることをしてきた彼の成果でしょう。
持て成すはずだった仙姫もアルを気に入って、式典最終日の武闘大会には一人で赴き、城で起こる騒動に対処したかった彼を自由に動けるようにしてくれましたし。
優秀な皇太子がいたからこそ、帝位争いとは無縁だろうと考え弟妹にも愛情を注いできた皇帝陛下は、それゆえに判断を間違えた部分があって。
それを補ってくれる宰相がいてくれたおかげで、最悪の事態においても信頼できる味方を確保できたわけですけども。
それにしたって内乱への協力者が多かったというか、予期せぬ裏切りでの混乱が生じたりして一筋縄ではいきませんね……。
予期せず庇護することになったルーペルトですが、この騒乱の中で「自分にできることをやる」姿勢を示してくれたのは良かったですね。