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「花乃が元の体に戻っても、別の怪奇に捕まるなんてことになったら後悔してもしきれないからな。知っちゃった以上放置して帰るとか個人的にナシだ」

(略)

「蒼汰くんは変わらないね。昔も言ってたよ。『見て見ぬふりして帰れない』って」

 

あまり事前の情報調べてなかったので、あらすじにある通り単に主人公の蒼汰君が通う学校で怪奇現象が起きて、それに巻き込まれた妹を救うために奮闘する話だと思ってたんですよ。

いや、本筋はそれで間違ってないんですけど。

 

私の認識と違っていたのは、蒼汰君達の住んでいる床辻という街がそういう怪奇現象のメッカというか、発生しやすい場所だったからこそ巻き込まれてしまったのかと思っていたんです。
あらすじ一行目が『床辻市に住むと、早死にする』でしたし。

でも、1章開始直後の12Pの段階で類似した神隠し現象は日本各地で発生しており、場所によっては街ごと消えてるとか書かれてて、想像より規模が大きくて驚かされました。

 

高校丸ごと1つ+アルファで済んだのは、規模としては小さい。

……だからと言って、家族が巻き込まれて「規模が小さくて良かった」なんて思えるはずがないんですよね。

怪奇を感じ取れる目や耳を持っていた蒼汰の妹、花乃。彼女は兄の危機を知らされ、駆けつけたところで事件に巻き込まれ……他の生徒たちは全身消失したのに対し、花乃は首だけが残された。

しかもその状態でも意識があり会話もできるし、口元に運んでもらえばお茶なども飲める。つまりは生きた生首、とでも言うべき状態になっていて。

 

彼女を助けるために市内の怪奇現象に敢えて踏み込んでいくようになった蒼汰が、後世一妃という少女と出会い、行動を共にするようになって。

今まで知らなかった床辻という街や、各地で起きている異変の裏事情について知っていく物語です。

いくつもの怪奇現象が出てくるんですけど、蒼太君は「驚くと怪奇側が喜ぶから」とほぼ無反応で乗り切れる神経の太いタイプな上、フィジカルで解決に乗り出せるタイプなので勢いがあって安心して読めましたね。

帯で「オカルトアクション」って書かれてるのも納得の展開だった。

 

怖くないかと言われれば怖いですけど、それはどちらかというと床辻という街には数多くの「禁忌」があって、うっかり破ってしまったとき怪奇に遭遇してしまうっていう事象への怖さだからなぁ……。

確かに床辻は、蒼汰が探し出したら何件も遭遇できるくらい怪奇が多い街であって、蒼汰達の叔父が「もう戻りたくないし、可能ならお前たちもそこを出ろ」と言ってくるのも納得する部分はありますが。

各地で神隠しが発生している状況を見ると、こう、その点での恐ろしさってどこに住んでてもイーブンじゃないですかね……って気持ちになるので。

 

一妃ちゃんは『迷い家』の主、という特殊な立場らしくて怪奇に挑む蒼汰に協力と助言をしてくれますが……。

特殊であるがゆえに異質な価値観を持っているのが、ゾッとするポイントではありましたけど。一妃ちゃんなりに蒼汰を大事に思っているのも間違ってないしなぁ。

蒼汰と花乃に一妃という3人の関係は現状は安定してますけど、微妙に見てる方向違ったりするから、こうもどかしい気持ちになるのは確かです。続き読みたいなぁ。