早計に失するな。疑惑で目を曇らせるな。もっと冷静に情報を吟味しろと俺の中の何かが訴え続けている。俺はまだ何かを見落としている。
「よく説明は出来んがな……今ディーナを追い詰めるのは間違いのような気がするのだ」
いやしかし七英雄の鍛冶師ミザールは、移動する都市ブルートガングを作ったかと思えば、自分のコピーとも言うべきゴーレムを作って遺してるんだから、一人だけ技術力おかしくない?
……それに付き合えるルファスも相当ではあるんですけど、彼女は常識外れの覇王だからなぁ……。ミザールコピーと一緒になって開発満喫して、リーブラ強化されてるのは笑っちゃった。
後にルファスが「強化しなくても充分強かったリーブラを更に強化してしまうという馬鹿をやらかした」とかサラッと流してるのもあってなお笑える。
そしてルファス達が次に訪れたのは、獣人たちの国ドラウプニル。
タイミングよく狩猟祭が開催されるところだったようですが……ルファス達からすればどうしたって低レベルな狩場でしかないわけで。
ただ新たな『乙女』として任命されたウィルゴが、物は試しで参加することに。レベル上限に到達してるルファスや他の十二星に比べると弱い彼女ですが、それでもレベル300あって、どこぞの剣聖とかより圧倒的に強いですからね……。
そもそもがパルテノスに育てられて、隔離された場所で育った彼女は自分の強さに無自覚だったため、良い経験を積ませられるだろうとルファスは考えたわけですが。
「あれ、狩猟祭の獲物って弱い?」って別方向の勘違いをしてたのが愉快。実力差に唖然としてる勇者君レベル35だぞ……。
その後、別の場所でパルテノス直伝の護身用の術使って、現代の人を驚かせてましたが。アレ十二星の前で使ってたら「パルテノスの術、しっかり教わってたんだねー」くらいのリアクションで終わって、大仰な背景教えてくれなかっただろうからクルスはいい仕事をしました。
ルファスへの合流を選ばなかった十二星のサジタリウスが現れたり、七曜が暗躍してたりして、ただの狩猟祭では終わらなかったんですけどね。
優秀な成績を収めたことで国からある依頼をされたウィルゴ。サポートにアリエスがついてましたが……現存の国家が求める至宝が、王墓にはゴロゴロ転がってたなぁと思ってる当たり、格差の激しさにいっそ泣けそう。よくもまぁ人類生き延びてきたな……。
トラブルが起きている中、力量差を自覚しながらもルファスの前に立てる胆力だけでも、勇者君は結構資質あると思います。
そして今回の一件で情報を得たルファス達は十二星レオンのところへ行くことを決めて。十二星もそこそこ揃ってきたから、別の気掛かりへとパーティーを分断させる選択肢出てきたの強いですよねぇ。
……いやまぁわりと単独行動とかしてるし、だいたいそれで対処できる戦力ではありますけど。
巻末のSSは「フェクダは冒険者に進化したい」。
小人族のフェクダ。彼は人類国家として最大規模を誇るクラウン帝国に兵士として所属しており、獣人のドゥーベと共に門の見張りをしていた。
そこに竜殺しを成し遂げ装備を更新したルファス達が現れ……さらにはタイミングを同じくして国が偽竜の襲撃を受けて。その活躍を見て、最後までルファスに臣従する戦士も現れたりする、大イベントに発展した模様。いやはや、運命的ですねぇ……。
未来の決別を知ってると、惜しいですけど。戦士の残した自伝の最後の一文が味わいあって好き。
あと「変態のスコルピウスが飛び出してきた」もついてましたが……まぁいつものスコルピウスなので、ある意味で安心。