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「いいえ。ルファス様。私はもう人形に戻る気はありません。私は貴方に出会うまで、自らの意思を持たない人形だった……貴方が私を『私』にしてくれた。ならば私は、女神様すら欺いてみせましょう」

 

ポルクスを乗っ取った女神の襲撃を退けたルファス一行。

その裏で姿を消したディーナが、実は女神のアバターであったことが合流したポルクスから指摘されて。

果たしてこれまでの彼女の行いの裏には、どんな思惑があったのか。それをルファスが探る一方で、十二星メンバーは残りのメンバーの回収へ向かう話。

 

ディーナが一体何を企んでいたのか。彼女の本心とは。

その核心を突くシーンは、当然作中でも屈指の名シーンになるのはわかりますが……口絵で答え出てるんだよなぁ。

まぁ「実は女神のアバターで、姿を消しました」ってイベントの後に、素直に女神のところに戻ってるようなキャラでもない、ってコレまでの振る舞いから察せる部分はありましたけど。

 

『水瓶』のアクアリウス。彼女は火龍の封印を担当していたが、対象はまどろみの中でアバターを生み出して暴れることがあり、その時期だから自由に動けなかったとか。

応援で十二星が駆けつけたら、そりゃアバター程度蹴散らせるよね……対面するきっかけにするために蹂躙された歴戦の魔神族もいましたが。合掌。

『魚』のエロス……じゃないピスケスは、女神の息子って情報が出てから登場までが遅かったし、あとがきでも弱くはないけど終盤に登場したのもあって印象薄くなるよね……的に語られてて哀れな……。

深海に世界のバグ枠の邪神が生息していて、同じくバグ枠らしいアイゴケロスが派手にぶっ飛ばしてたの笑っちゃった。思い切りのよい挿絵好き。

 

ルファスに宿ったゲーマー主人公の魂がどこ由来だったのか、とかも作中で理屈つけて設定にこだわってるのは好きです。

長い時間をかけて計画を練ってようやくたどり着いた現在。そのために暗躍を続けていた彼女の努力には頭が上がりません。

……現代の「俺」を引き寄せるために作りあげたゲーム、異世界の空気感を再現するためになかなかのクソゲー仕様だったようで、勇者君の翻弄されっぷりを見ると「それは確かに」としか言えなくて笑えた。

 

巻末SSは「夢は悪夢(げんじつ)に変わる」。

冒険者ルファスが、覇王ルファスに変じるまでの物語。夢に向かって進んでいるうちは良かったけれど、ひょんなことから夢が手元に来てしまったときに、選択を誤ってしまった。

過去のルファスもまた迷いながら進んでいる人間だったんですよね……見逃した存在が悲劇を起こしたせいで歪んでしまったのは、悲しかった。

もう一編が「邪神様はダラダラしたい」。アイゴケロスに吹き飛ばされて、新天地にたどり着いた邪神様がそこを満喫する話。深堀りすると別の物語になっちゃうから、このくらいでちょうどいいけど、かなり愉快な性格してたんだなと思うと割と好きだな邪神様。