「――だからこそ、私は幸せになるために生きるんだ。私のようにいきたいと、そう思うことで救われる誰かが私の後に続くことが出来るように。人は幸せになるために生きることが出来ると証明するために。私は、この世界で生きることを諦めないよ」
獣人の少女アクリルと出会い、彼女から情報を得たことで改めてヴァンパイアについて調査することにしたアニスたち。
三か月も実験に付き合うことになったレイニはお疲れさまでした。ヴァンパイアの魔石に蓄積された経験が彼女に還元されて、魔法や剣技などが向上したようですが。
ヴァンパイアのスペックが解明されるのは、目的からするとありがたいことですが……スペック高すぎて厄介なのも間違いなくて。
協力的なレイニはまだしも、ヴァンパイアと敵対することになった時には魅了対策も必要になってくる、と問題山積。
そしてレイニは、自分と同じくヴァンパイアであっただろう母の足跡をたどりたいと申し出ることに。
とは言えアニスが身柄を預かることで保護してる状況で、一人旅は認められるはずもなく。
そこでアニスが同行することになるの、彼女らしいと言えばらしい。ただ、王姉殿下となった彼女がいつまでも最前線で体を張るのは……とナヴルが苦言を呈するのも分からないではない。
「意見としては正しいけれど、それをアニスに押し付けるのが正しいとは思わない」とアニスと親しいティルティやレイニがアドバイスしてたのが印象的でしたねぇ。
どうしたって立場や環境が変わった以上、振る舞いも変える必要が出てくるわけですし。
まぁ、今回に関しては実際に暗躍するヴァンパイアと遭遇するからアニスでないと対処しきれなかったわけですけど。
あとがきにもありましたが敵の首魁は、あるいはあり得たかもしれないアニスの鏡写しのような存在で……それでも囚われずに、自分の願いを貫いたアニスはお見事でした、というか。
『今』という時間は、抗うことをやめない彼女だからこそたどり着けた場所で、アニスがそれを大切に思ってくれているのが、とても良かったですね。