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「だから――忘れるな。すでに喪った者はその空白を指でなぞれ。まだ喪っていない者はそれを固く抱き締めろ。それこそが君たちの人間性の核を成すものだ。欠けた形を当然と思うな。欠け落ちる運命に達観して肯くな。そのような諦めが積み重なる度に君たちの魂は削れていく。その果てに魔道の深淵に立ったとて――そこにはただ、虚ろな神秘が残るだけなのだから」

 

三人目の仇を討つこと成功したオリバー達。

教師がそれだけ欠けたことに、キンバリー関係者が黙っているはずもなくて……。

集会を実施してしっかり生徒の欠員をチェックしてるあたりは恐ろしい。

オリバー一党もキンバリーの魔女を甘く見てはおらず、同志たちの中には死を偽装して迷宮に潜んでいたりして、犠牲者の数を誤認させることには成功してました。

そこで素直に「生徒が犯人とは考えにくい」と納得してくれればよかったんですが、いろんな可能性を考慮してそうとも言い切れないって判断するのは厄介です。

 

エスメラルダ学長を筆頭とする仇の一門だけではなく、キンバリーでは一介の講師であり最弱を自任しているテッドが独自に行動を開始したりしてますし。

とても楽しい先達であったゴッドフレイが卒業し……今の魔法界の秩序側である、異端狩りに就職することが決まったため、今後はオリバー達の敵になりうることが示されたり。

見事な成果を上げているものの、道行は険しくなるばかりですね……。

 

そしてオリバー達は四年生の進級を控えた長期休暇で、仲間の故郷をめぐる帰省旅行に出かけることに。

上級生に踏み込むことになるため、区切りの時期に良く行われるイベントで、オリバーも疑われる要素を減らすためという意味も込めて、剣花団の仲間たちと旅行を楽しんでいました。

 

衝撃的だったのは、アールト家の両親がかつて行ってしまった出来事について。

いや本当に異端っていうのは恐ろしいですね……。よくもまぁ世界が存続してるもんだとすら思ってしまう。

同行を許されたテレサの抱えていた秘密も、彼女の魔術師としての業を感じるものでしたし。カティは両親から見ても危うい境地にいるみたいだし。

 

剣花団の面々がキンバリーという魔境で、燃え尽きてしまうのではないかと、物語が始まった時から思っていた怖さが、彼らが上級生に進むことでより鮮明になってきた感がある。

少しでも救いのある結末があって欲しいものですが……これもあくまで読者目線での物言いだからなぁ。

以前最速を求め、それを成し遂げた末に散ったアシュベリーを例に出すまでもなく、道を定めた魔術師であれば、大願成就の結果であれば自身の死すら飲み込めるものでしょうし。

それがわかった上で、それでもと思わずにいられないのも間違いない気持ちですが。オリバー達の道がどこに至るのかを、見届けたいですね……。