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「誰かに助けてほしいのだろう。自分ではもうどうしようもないのだろう。なら――なぜそう言わない。存在もしない神ではなく、ここにいる俺に訴えない」

(略)

「呼べば、必ず助けに行く。声が届く限り、この手足が動く限り――俺は、そうすると決めている」

 

『七つの魔剣が支配する』シリーズのサイドストーリーを原作者直々に描いてくれる、スピンオフ。

煉獄の記とある通り、本編でメインを張るオリバー達が入学して以来とても頼りになったゴッドフレイ統括のエピソードですね。

同時発売した本編最新11巻では、その頼りになる印象そのままに卒業していってしまったわけですが……当然ながら、そんな彼にも若い時は存在したんですよね。

 

火力のコントロールが苦手だった、というのは本編でも描かれていたような気がしますが。

親が彼の資質を見抜けず、魔力暴走と断じてしまったせいで、彼はその膨大な魔力で自らの蓋を作ってしまっていたそうで。

まともに呪文を扱えないまま、魔術学校入学の年齢になってしまって。とりあえず片っ端から受験したが成果は芳しくなく……落ちる前提で挑んだ名門キンバリーに拾われたとか。

 

まぁキンバリーの教師たちは一癖も二癖もあるから、彼の資質を見出した後も懇切丁寧に教えてくれはしなかったわけですが。

ギルクリスト先生にも、これまでの年月徒労を重ねてきたからこそ、自分で自分を救わなければならないという考えはあったみたいですけどね。

厳しい状況にあっても折れず曲がらず、彼らしくあり続けたのはお見事でした。

 

……しかしゴッドフレイが彼らしくある、ということはキンブリーの現状を良しとしない、という意味でもあって。

無秩序なキンバリーで低学年が集まって自警団を作るっていうのは、なかなかに無謀だと思いますけど。校長にも直談判してある程度黙認される環境を作ったり、馬鹿正直に突っ込むことも多いけど、しっかり交渉も出来る強かさを持ってるの良いですよねぇ。

気に入らない勢力から叩かれたりもしつつ、頼れる先輩に助けられたりすることもある。不思議な魅力を持つ彼だからこそなしえた軌跡がそこにあって、一部だけでも垣間見れたのは嬉しかったですね。