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「捨てられて、どうして殉じられる?」

「そうすべきだと思った。神と正面から向き合うならば人も誠意を尽くさねば」

「裏切られてもか」

「少なくとも、己が納得できるまで」

 

第三譚と第四譚を収録。

ちなみに私は紙版を購入したんですが、各ストアの電子書籍版では『紅き唇の語りし夜は』という短編が特典としてついてくるそうです。

こちらは四譚~五譚の間のエピソードとして描かれた、古宮先生が以前同人誌として発売された短編なのですが、再録された形になるので読んだことない方にはとてもオススメです。

 

短期間シシュが王都に行ったりとかもしてますが、物語の主な舞台はアイリーデへと戻ります。

第三譚では、アイドが追放されたことで新たに化生斬りが補充されることになって。

来る途中で行方不明になって、捜索に行って発見したと思ったら厄介ごとを持ってくるというどうにもイラっとするタイプではありましたね……。

 

補充の下りでアイリーデの化生斬りについての話が出てきたのは笑いました。

5人定員だけど、シシュの前任は高齢で退任したが後半は働いていなかったとか。その関係で4人体制に慣れていたから補充が遅れたとか。やたらツッコミどころばっかりなのが個人的にはツボ。

 

神話正統を継ぐ月白の主であるサァリは、これまでも描かれた通り人と神の二面性をもつ「異種」なわけですが。

1巻では王都出身のシシュと夜の街アイリーデ生まれの娼妓サァリという、生まれによる価値観や性格の違いによって生まれる凸凹コンビ感じが微笑ましく映っていたわけですが。

今回収録された三譚~四譚のあたりは、人と神という異種ゆえに生じるズレが強くなってきたように思います。

 

サァリは月白の主として祖母から教えを受けていたと言いますが……なぜ母ではなかったのか。その真実についても明かされたりもします。

価値観の違いというのは、この作品を通して重要になるポイントなのかもしれませんね。

第四譚での不文律に関してのトラブルも、ある意味ではその類ですし。

不文律--明文化されず、暗黙の了解となっている規則。神代からの歴史のあるアイリーデにも当然それはあって、それを巡ったやり取りも生じたわけですが。

 

……明示されないとわからないものというのは、人の心の内にもあるんですよね。分かることと分からないこと、言うべきことと言いたくないこと。いろんな思いと選択が交差した結末が今回描かれました。

異類婚姻譚らしいすれ違いのなかでも、サァリとシシュそれぞれのらしさが光っていて良かった。

「章外:祝福」として書き下ろされたエピソードですが、書籍のみの読者には分からない部分が、WEB最新話まで読んでると刺さって痛かった。