「人との関わり方を知らないまま大人になって、恋もせずひたすら隠れて生きろと? それ、幸せな人生かしら。偉い人に閉じ込められて利用されるのと、たいして変わらないわ」
「そうだな……そうだった。お前の言う通りだなイルダ。自分を守るために誰とも関わらずに生きろと言うのは、残酷だな」
「ねえ、あなた。これからはもっと先を見てアレシアを育てましょうよ」
砂漠の国において最強の水魔法使いとして畏怖されたアウーラ。
しかし彼女は隣国との内通の疑いをかけられて処刑されてしまった。
……そんなアウーラの生まれ変わりである少女、アレシアが主人公の物語。
彼女は生まれた時から特殊な力を持っていた。それが「自分が寝ている間、一定範囲に雨を降らせる」能力。
砂漠において水はあまりにも貴重なため、その力が権力者に知られたらどうなるかわからない。
そう考えた両親がアレシアを守ろうと工夫を凝らしてくれたのが、本当に良かった。前世で大変な目にあった彼女ですから、良い両親のもとに生まれたのは救いですよ。
寝るときに雨を降らせる、という魔法としか思えない力。
けれど、魔法使いとしての記憶を取り戻しても制御することはできず……アレシアが成長するにつれて雨の降る範囲も拡大していった。
初期は街から離れた場所に隠れ住み、成長してからは街に拠点を設けて人に紛れることにした。アレシアの世界が少しずつ広がっていくのが良かったですね。
アウーラを処刑した王家は後にクーデター起こされた、今は新しい王家が立っているみたいだし。アウーラが起こしたとされる大洪水はあくまで自然災害に過ぎないと隣国では伝えられてるみたいですけど。
アレシアの転生までまだ三十年程度しか過ぎておらず、実際に大洪水の被害を受けた人が生き残っているのもあって、この国ではアウーラを責める声がまだ多いみたいで……図書室で怪しい集いが催されたりして、心配材料は多いなぁ……。
あと地味に改行が多いレイアウトなのが気になったなぁ……。地の文が短いシーンとかだと特に空白が目についたというか。