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「こちらの殿下が今まで耐えたことを、陛下が否定してはなりません」

 

魔法がある異世界に存在するとある帝国。

その国の当代皇帝は、先代皇帝の隠し子として生まれ伯爵家に預けられた状態で、普通に結婚し主人公のアッシュを長男として授かった。奥さんは早くに無くしてしまったようですけど、何もなければ伯爵家の関係者として生涯を過ごしたはずです。

しかし継承権を持つ者の多くが亡くなってしまって、父が皇帝として担ぎ上げられることになってしまって。

 

宮廷を知らずに伯爵家の三男として育ったことなどがあり、父の皇帝としての立場は弱かった。

更には後妻として迎えた妃の間に次男が誕生し、周囲は継承権争いを警戒し、アッシュを遠ざける選択を取った。

そんな環境なので普通ならアッシュも荒んでいったのかもしれませんが。彼には前世の記憶があり……前世でも不遇だったけれど、家庭教師など数が少なくとも頼れる味方が居て、獣人や魔法に錬金術など前世にはなかったものに興味津々で。

庶民だった前世の意識もあって、皇帝なんて荷が重いから趣味に生きようとしてるんですよね。

 

実際、今では廃れてしまった錬金術の知識を習得したことで、役立つ発見を色々したりしてますし。

……下手に目立つと、アッシュを敵視する派閥が隔離ではなく排除に動くかもしれないのもあって、成果を秘匿する方針なので彼のあげた実績を知る人は少ないんですが。宮廷を出てもなんだかんだ強かに生きていけそうではあります。

 

アッシュの存在を面白く思わない輩は多く、彼の行動には多くの制限がかかっています。

第一皇子でありながら権力も何も与えられてない彼は、多くの困難に見舞われますが、どうにか対処していって。1巻の範囲で、後妻との間にあった誤解が解消されて弟妹と交流できるようになったのは良かったですね。

WEB既読なんですが、これからもアッシュの先には困難が多く立ちはだかるのですが、折れずに進んでいってほしいと願っています。

書籍加筆で、父親がWEBよりも有能にみえたりもしましたねぇ。厳しい立場ではあるでしょうが、励んでもらいたいところ。

 

ちなみにWEBだとストラテーグ侯爵視点の閑話などが途中に挟まっていて、他キャラの解像度があがりますよ。……アッシュの存在に対して興味を示してないのがより強く描かれている形にはなりますが。

元々物を揃えられずほとんどなにもない部屋で暮らしているアッシュに「あからさまに物減らして、なにか隠してるでしょう」とか痛くもない腹探りに来たりしてるし。その事実に気付きつつ、深入りするつもりないから流してるんですが。

このあたりもアッシュが不遇なのを強調する描写ではありますね。

 

アッシュ自身は皇帝になる気もないし、自分の弱みを相談して父親としての態度を出してしまうと、皇帝としての父の立場が弱くなるから、あえて口を噤んだりしてて、アッシュが敢えてそうしてる面とかもありますが。

これからどうなっていくんでしょうかねぇ。アッシュの錬金術の進展とか結構好きなので、続きを楽しみにしてます。