「アークスくんはこれまで一生懸命勉強してきたんだ。それは決して君を裏切ることはない。君の識格は、それを使うに足りているよ」
「ガウン、それは――」
「さ、やろう。困難を止めるときはなんでも、一発勝負だ。いままでだってそうだったんだ。これからだってきっとそうだよ、ね?」
前半分が、アークスの画期的な発明「魔力計」の発表について。
アークスの叔父クレイブ以外の国定魔導師や、軍関係者からも高く評価されるアイテムで……需要が高いことが分かっていたからこそ、しっかりと数を揃えてから発表した。
そも測定器である以上、画一的な機能を発揮する必要があるからその分の調整にも苦慮した、と。
そうした準備があったので、その後もしっかりと動くことができたわけですが……。その分、開発責任者であるアークスに多くの書類が来ることになったのはちょっと笑っちゃった。表紙イラストがまさにその状況ですけど、大変そうだぁ……。
書類仕事に追われているアークスがコピー魔法を披露する加筆エピソードが地味ながら好き。作るだけ作って、ノア達にも教えてなかったそうですけど。まぁそれも含めてアークスらしいエピソードだと思いました。
国王とクレイブが話していた、レイセフト家現当主であるアークスの父ジョシュアが「『当たる』かも」という話が、どうにも気になりますが。
アークスの廃嫡を急いだことも、クレイヴ目線だと納得しがたい部分があったようですし。魔力計を見た時、妹のリーシャは気付いたのにジョシュアは気付くそぶりもなかったり、と。一度自分の中で評価を定めてしまった手前、それを覆すことのできない頭の固さが困りもの。
そして後半第三章「妖精のお願い」は完全書下ろしのエピソードですね。
魔力計の発表から二年がたち、魔導師の実力が向上したことで他国にもなにかが起きていると疑われることに。
情報は洩れるものと考えて防諜対策を徹底していましたが。それでもなお探ろうと、禁忌とされる手段に手を出す輩まで出てきたのは面倒ですねぇ。
相手が禁忌に手を出したため、死者の精霊と呼ばれるガウンが動いていたわけですが。名が知れている以上、対策も知られていて。
困った状況になってしまったガウンはアークスに助けを求めてきて。
精霊や妖精が主だって困難を解決する時代は終わって、時代は人間に譲り渡しているから、あくまで出来るのは手助けだけ、という精霊としてのスタンスも影響していたでしょうけど。
WEBで見たことのないアークスのオリジナル魔法が見れたのも良かったですね。制限付きのため今回だけ使えたものではあるようですが
彼の識格――言葉で成り立つ作中世界において、どれだけ言葉に関する知識があるかを指す言葉――について精霊ガウンからお墨付き得られたのは、正直感動した。本当にアークスに不足しているの経験と魔力量くらいで、それが埋まるとああいう魔法も使えるんだなぁ……。
魔力計の作成で、少ない魔力を効率的に使う方法については確立しましたが。始まりの願いとして言えば、魔力量を増やす手段も探していたわけで。アークスの不足が、一度きりの手段ではなく埋まる時を、心待ちにしたいものですね。