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「たとえば『ぽっかり穴があいたみたい』とかよくいうじゃないですか。あれともちがうんですよね。もとから二人だけの家で一人いなくなったら、それはもう『穴』じゃなくて天井がなくなっちゃったみたいなもんで、それでも当座の生活には困らないからそのままなんとなく暮らしてて、雨が降ったら困りますけど今のところ降ってないし、みたいな……ああ、すみませんわけわかんないですね」

 

大御所ミステリ作家の宮内彰吾、死去。

妻帯していたにも関わらずあちこちで女を作り捨てていった男。その浮気相手の一人が、主人公の燈真の母だった。

最も燈真は父にあったこともなく、ずっと母子家庭として育ってきて。存在と名前こそ知っていたものの、著作に手を出すこともなかった。

 

母との関係は良好で、ジャンルこそ被らなかったけれど趣味の読書の事でよく話をしていたとか。けれど彼の母は不意に交通事故で亡くなってしまい……その2年後、父の死亡をネットニュースで燈真は見ることになりました。

関係ない相手がついにいなくなった、というだけで葬式なんかにも顔を出す気はなかった。

けれど、なぜか宮内の長男から「宮内が最後に書いていた小説を探している」という連絡が入って。いろいろな思いがありつつ、燈真はその捜索に関わることに。

 

形見分けという名目で、宮内の浮気相手たちに連絡をとり、自分の知らなかった父について知っていく。いやまぁ、普通にクズだなぁとは思いましたけど。

そうやってあちこちで情報を集めていく中で、トラブルがあったり新発見があったりもするわけです。

そして最後に明らかになった真相が、なかなかに凝っていたなと思いました。本作、電子書籍版がなく、紙のみでの刊行となっているのですが、そうするだけのこだわりを感じたと言いますか。ある意味執念だよなぁと言いますか。