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「誰が何を言おうと、わたしにとっての勇者は貴方なのです。ありがとう、あの時わたしを助けてくれて」

 

魔王と呼ばれる存在が現れ、その脅威に瀕した国が存在する世界。

主人公たちの住んでいる地域は片田舎の村であり、そうした騒動とは無縁の長閑な村だった。同年代の子供たちとはしゃいで遊び、魔王と戦う勇者の物語に憧れて自分も勇者になろうと言い合う、平和な時間を過ごしていたわけですが。

この世界では十歳になったときに『神託』を受けて、職業を授かるという風習があって……。

 

主人公のフォイルは『勇者』の職業を与えられると同時、「偽りの勇者」という称号までも与えられ……。職業を与えられなかった幼馴染のユウが、真の勇者であることもまた理解してしまった。

そのため、魔王との戦いにユウと魔法使いの職業に目覚めたもう一人の幼馴染の少女メイを連れていくことを決断したわけですが……。

 

勇者パーティーとして参加することになった剣士グラディウスは、女癖が悪いし力なき相手をさげすむ傾向があり。もう一人の魔法使い、貴族令嬢メアリーは選民思想が強く平民を切り捨てるような行動を平気で取ることもある。

そんな状況だったので、職業がないユウは居心地悪かったと思うんですよねぇ。

彼の献身と提案した作戦によって成果を上げたこともあるけれど、メアリーの反発によってフォイルの功績かのように扱われてしまって。

それを受け入れてしまっているユウの姿を見たフォイルは、敢えて彼をパーティーから追放し、『偽りの勇者』として振舞うことで覚醒を促そうと考えた。

 

フォイルは、かつて勇者に憧れたこともあり、多くを救いたいと考える善良な少年だったわけですが……女神の授けた職業と称号が、そのまま光の道を進むことを許さなかった。

追放したユウが覚醒するに応じて、自分の力が低下していくのを自覚しながらも、最後まで『偽りの勇者』として振舞い続けたのは、見事だったと言ってもいい。

偽りつづけた罪を背負って命を賭ける覚悟だったわけですしね。

 

ただ実際には死にかけたフォイルを救ってくれた少女が現れるわけですが。

聖女の職業を与えられた、かつてフォイルに助けられた少女アイリス。あの時に助けてくれたのは貴方だから、とフォイルが自分の勇者であると言ってくれたのは良かった。

意図せず命を拾ったフォイルは、今後は自分の心を偽らずに誰かを助けるために動こうと思えるようになったのも良いですよね。

実際、フォイルに因縁があり追っていた相手とはいえ、村一つ滅ぼしていたかもしれない魔族を、勇者不在の状態で撃破してましたし。フォイル自身は好きなので、今後を見守りたいですねぇ。

 

……これまでの歴史になかった、偽りの勇者と真の勇者なんて三文劇を突然開催した女神オリンピアの『神託』とか、メアリーみたいな選民思想にかぶれた貴族とか、世界に対する不満はありますが。メアリーはその愚かさの代償を自分で払うことになってたし、まぁ……。

神託の真意についてはおいおい明らかになって欲しいものです。