「私に、しとかない?」
主人公の近衛秀一は、近衛家という名門の出身であるため、幼少期からお近づきになりたい人々が多く……都度判断するのも面倒だから、というのを口実に多くを遠ざける選択をした。
とは言え、祖父から『家督を継ぐ者は、速やかに結婚するべし』という家訓を適応する相手……つまりは、後継者として目されているならもう少し交流するべきではないかなぁ、とかはちょっと思いましたが。
下手に距離を置きすぎると、実際に働き始めた時に響きそうではある。……ただまぁ、幼少期に近づいてきた人々を見て、人間不信になったことを思うと、彼の責任ばかりでもない気もしますが。
何度も持ち込まれた縁談も断り続けていたが、ある時顔合わせまでセッティングされた状態で、とりあえず会うだけでも会えと言われて。
いざ会ってみたら、相手は幼いころに遊んだ親友ゆーくんこと烏丸唯華だった。
タイトルにある通り、かつては男子と思っていたけれど、再会したときには綺麗な女子になっていて……それでも、再会した場面で即座に見抜いたのは、紡いだ縁を大事にしていた証で良かったですね。
唯華もまた実家から結婚しろと言われているから、親友だった縁で結婚してしまえば、お互い幸せじゃない? という提案をされて。
秀一はあくまで親友の提案にのっただけ、っていう側面が強いですが。唯華の方は、かつての交流でがっしり心を掴まれて、彼の結婚相手になるべく準備し続けた重さを持っていた女でもあって……。
気心のしれた相手ということもあって、一緒に暮らすようになっても楽しそうな時間を過ごしていましたし。唯華も同じ学校に通うようになって、クラスメイトとの交流も増えてきたしで、少しずつ変わってきたなぁというところ。
唯華が迷い一度実家に帰ってしまったときに、秀一が踏み込んでいった終盤の展開は良かったと思います。