「……私が我慢すればその場は上手く回る、って状態あったりしない?」
「えっと……あると思う」
(略)
「それってつまり――うまく待ってない、ってことだからね」
シリーズ初となる短編集。
それは例えば、中学時代の日南葵について。
まだ完ぺきではなく、今の友崎のように失敗をしつつも目標を定め努力を続けていた日々の記録である『プレパーフェクトヒロインの憂鬱』。
はじめての恋人関係となったあと、女子たちの中で問題視されたりして、空気読み違えている彼女を見るの、ちょっと新鮮でした。
二学期初旬ということで4巻あたりの時系列の時に、服を買いに出かけた日南と友崎のやりとりを描いた『とある買い物にて』。
かと思えば直後に、夏休み合宿時の女性陣のエピソード『その“恋バナ”の向かう先』が入っていたりもしました。
菊池さんが運命の1冊に出会う『言葉でしか知らない色』や、彼女の日記の一部を切り取った『日記帳 二年目/五月~』。口数少ない彼女の心情が垣間見えるエピソードで良かったですね。
中村と泉の恋模様を描いた『寒い朝、駅前にて』はリア充な彼らも、教室の空気感の中で上流にいるだけで、迷いも戸惑いもする等身大の青春を送っているという話で、シリーズの味わいを深めてたと思います。
あとは水沢がしてるもう一つのバイト『ドランク・オン・ノンアルコール』でも、彼はしっかり自分の恋を自覚して、自分らしさも分かってるの強いですよねぇ。この恋も決着どうなるのか、地味に気になる。
たまちゃんがエリカの一件に対して下した決断を受けた後について描く 『振り切るためのスピードで』や『彼女と餃子』はみみみらしくて良かったですし……6巻と7巻の間、ということで実に気になる『そして、そのあとの話』が短編集最後に収録されていたのもグッジョブ。