「では、ロセッティ会長には日を改めて、いずれ何らかの形でお返ししなくてはいけませんね」
「ああ、おいおい考えて――いつか必ずお返ししよう」
遠征訓練に同行したり、ダリヤと魔物討伐部隊との関係は良好なまま続いていた。
ダリヤ作の魔導具の補助などもあって、昔と比べるとかなり快適な状況で活動できるようになっているようです。
全部が全部ダリヤの影響でもなく、かつては水の魔石が十分に確保できなかったころもあるそうですし、変化は偉大ですねぇ。
怪我で引退した先達からするとぬるくなったと思う部分もあったみたいです。
……実際、危険な仕事でもあるため、多くの犠牲が出るのを見てきた御仁でもあるから、思うことあるのも仕方ない部分はあるでしょう。
けれどダリヤと言葉を交わし、自分の方が昔を手放せなかったのだと気づき、グラートにダリヤを守るための助言を与えてくれてたの良かったですね。
老境にあってなお自身の考えに固執せず、若者の意見に納得できるものがあれば頷いてくれるの本当にありがたい。
ヴォルフのアンダーシャツに刺繡する「背縫い」を頼まれたダリヤが、意図せずまた新しい素材生み出してたのが流石としか言いようがない。
他にも口絵で描かれていましたが、魔導義足なる補助器具まで開発して。現役引退した騎士が、再起するだけのエネルギーを得ていたの、これはこれで大発明だよなぁ……。
あとは、巻末にあるカルロがメインの番外編『父と娘の魔導具開発記録』が、印象的だったというか。
カルロの妻、ダリヤの母である女性がどんな人物だったのか。出会いと、「死別」するに至った経緯についても描かれていましたが……どうしようもなくて、救いもないなぁというか。ダリヤの開発するアイテムで生活便利になって良かったね、というだけじゃなくて貴族絡みのややこしさもまたこの作品らしさではありますが……重いなぁ。