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「私、許さんの琵琶を聴くために、なんだってしちゃいますよ! やる気だけは本人次第ですが、応援は全力でやります!」

握りこぶしを突き上げて宣言する雨妹に、杜が拍手をしている。

「うむうむ、人間己の欲望に素直が一番! もちろん他人に迷惑をかける欲は身を亡ぼすが、変に抑圧するのも歪んでしまうゆえなぁ」

 

雨妹に教坊区画の掃除を頼んだら、薬物の痕跡とか言う厄介極まりない物を発掘して。

早い段階で対処できるようになったのは総合的に見ればいい事でしょうけど……あちこちに連絡して現場で対応することになる揚からすると、苦労が絶えない状況でもあるわけで。

なんというか本当にお疲れ様です……って気持ちになりましたね。

 

縁のあった琵琶師・許の事情を聞き、情報を補う任務を終えた雨妹。

立彬と、明が保護している記憶喪失の男・東が許と縁のある男なのではないか、というところまでは、まぁ両方の情報知ってれば結びつけちゃうものですよねぇ。

許のへ恋人の死が伝えられたのは、兵役に出た先の国境地帯で彼に死んでいて欲しい理由が出来たからではないか、とまで行くと厄介極まりないですけども。

雨妹鋭いから、なんだかんだ正解引き当ててそうなんですよねぇ……。

東を狙う輩までいるし、皇帝陛下もまた国境地帯の不穏さに気付いて動いているみたいですし。

 

そうやって教坊周りで騒動があったかと思えば、菊祭りの際に縁が出来た黄徳妃の近くでも異変があったようで。

彼女を良く思わない女官たちの工作で、宮内に悪臭が広がるようになったとか。それに関わった宦官に直接妃が仕置に動いているあたり、フットワーク軽いなぁ。

一応そういった悪心ある女官は太子の計らいで排されたようで、それは良かったですけど。新たにつけられた老女官・全が、名の知れた御仁らしくてそれだけ徳妃を重んじてるのが分かる。

そして全からの依頼で、百花宮内で黄徳妃のお忍びをやろうと思ったら東国の間者と鉢合わせたりして、本当なにかそういうの引き寄せる運命を雨妹は持ってそうですね……。

 

特装版は短編『弟、妹』、『陳先生と美味しい薬』、『この人も、百花宮のお掃除係』の3編を収録。

いじわるな女官から逃げるために獣道通ってた友仁皇子、改善されて以降もそこを通るの癖になっているそうで、おつきは大変そうですねぇ。莉公主も伴っていて、予期せぬ弟妹との交流になっていましたが微笑ましくて良かった。

『美味しい薬』は、苦い薬をいかにして飲ませるかという手法について陳先生から雨妹が相談を受ける話。しっかり、この世界で出来る方法で案を出してるので偉い。

『この人も~』は、都出身のお掃除係・梅周りの話。雨妹と接点少ないキャラではありましたが、彼女には彼女の苦労があるんだなぁという感じで良かったですね。