「あれぇ?」
「どうかしましたか?」
「……いい方のようです。びっくりどっきり錬金術師としていばってると思ってたのに。あれ?」
トールが魔王ルキエのお抱え錬金術師になってから、まだ数か月しかたってないんですって。一年もたっていないのにあれだけの成果上げられたら、そりゃ毎度宰相の頭も痛むってものでしょう。良い薬飲んでもらって。
国境地帯での折衝や交易所の設置準備などに携わるという名目で、文官をしている姪エルテを派遣してきてましたが、トールのトンデモに姪を巻き込むとは非情な……という気持ちと、まぁ頭痛はしても結果的にいい未来になるからそこまででもないかという気持ちが湧く。
異世界から召喚された疑いのある魔物について調べるため、勇者世界のゴーレムを参考にトールがまたトンデモアイテム作りだして。
毎回宣伝文句を100%信じて、それを超えるアイテム創造してるのが凄まじいんだよなぁ……。他の人からもアイデアを募集して、自分になかった着想を得たりもしてるので、もう止まらないな。
なんか別のアイデア組み合わせて、勇者の魔法の再現とかまでやってるし。出来ない事あるの……?
派遣されてきたソフィア皇女は魔王国に……というかトールに対して大分親身になってくれていますが。未だに帝国は意識を刷新できず。
皇帝や皇太子があれかぁと思うと、頭が痛くなりますな。トール開発のロボットが、魔獣を呼び出したと思われる召喚術の魔法陣を見つけてましたし、そうすると当然勇者召喚の術式を持つ帝国の怪しさは増大しますしね……。
というか前回川に落ちたマリエラ、下流で助けられてて草。生存能力たかーい。でも、監督責任を問われてザグランは謹慎になったらしいし、その結果としてリアナはそれまでの常識が揺らいだみたいなので、全部悪いとまでは言いませんが……。
その才能ゆえに自分を見失い、流されるように生きてきたリアナが、可能な限り身軽な状態でリアナに会いに行って、姉妹で話が出来たのは良かったですね。
帝国関連のこととか、リアナについての話は「優しい姉」として接していたソフィアが、過去のトールへの言動を聞いたときは好いた相手への無礼で「怒れる姉」に変貌してたの、ちょっと笑っちゃった。救われたこともあって、なかなかに過激派だなソフィア皇女……。
勇者召喚の術式を使っている筈の帝国が、どうして魔獣を召喚してるのかと思いましたが。魔術を改良したとかではなくて、かつての勇者たちが帰還したのち超常の力を保持していたことで、勇者世界でその知識を得た一部が『召喚』実験を行い、魔獣との戦いが広がる世界に変貌したからだという情報が明らかになったのは、設定好きとしては嬉しかったですね。
その騒動に決着がついて、トールの魔王国での立ち位置も改めて定義されることとなり、力を求め続けていた帝国の皇帝が重要な決断を下すことになる。これまでの騒動に一つの区切りがつく巻でしたね。
トールが制作物を勇者世界に送りかえして支援する、みたいなことしてるっぽかったですけど、改造されまくったアイテムに「現代人的なツッコミ」が入れられてるのには笑った。やっぱりおかしいよね……。