「……出来ないよ、そんなこと」とっさに首を振って少女から視線を逸らし「月姉やフィアだけじゃない。大切な人がこの世界にはたくさんいるんだ。そういう人たちをみんな魔法士にするなんてできない。だから」
「そうか……」
賢人会議の参謀、天城真昼が死んでしまったことにより運命は定まった。
覚悟を決めたサクラは、非魔法士の根絶を目的とした全面戦争を布告して……。
サクラやディーといった一線級の戦力でなくとも、魔法士というのは戦場でその強力な力を発揮する存在なわけで。
シティ側も警戒・対策を取ろうとはしていたんですが、どうしても被害が増えていく。そんな絶望的な状況で、各々の立場で出来ることをしようとしているのはまだ良かったと言えるだろうか。
シティの上層部の覚悟が決まっている証として、生き残ったシティが連合組んで戦争に応じる構えを取ってしまったので、易々と止まれなくなったことは心が痛くもなりましたけどね……。だからと言って賢人会議に蹂躙されろ、なんて言えないしなぁ。
……ただまぁ、ここまで状況が煮詰まってしまうと、どうしたって望まぬ行動を強いられるキャラも出てきたりはするんですが。
錬とフィアが露骨に影響を受けてしまってるなぁ、という状況ではありましたね。マザーコア用の「天使」であったフィアの存在が露見し、連れ去られて……錬は不本意ながら前線に立つことになって。
祐一やヘイズたちもその事には途中で気付いたんですけど、差し迫った状況で割ける戦力が無く、先送りすることになってたりしてましたしね……。
辛さでいえば、他人を傷つけることを嫌うセラが過激さをました賢人会議に残っていたこともまた悲劇的ではありましたよね。
争いを厭う子供たちはいるけれど、一度舵を切ってしまった以上はもう止まることはできない状況になっていて……。セラはサクラを止めたいと願ってこそいたけれど、結果を出せずにいましたし……。
賢人会議に多くの魔法士が流れる中、シティに残って協力する道を選んだ人々もいて。
本当にこの世界の人々の生き様は格好いいなぁ。良いキャラが多いんですけど、そういう人が多くても、どうしようもない戦いに転がっていってしまうくらいに絶望的な世界だということが改めて示されているようで辛くもありました。
イルはモスクワの英雄としての立ち位置を定めていてることもあって、賢人会議との決戦には参加して。サクラも覚悟を決めていた中で、未だ錬が迷いの中にあったのは彼らしかったですね。
アリスが見た『世界の解』についても示されて……本当に最終局面なんだと実感しました。サクラが衛星を抑えたことで賢人会議側有利になってしまったのか、という所で引き。
上巻、発売直後に購入していたので手元に初版があるんですが……いやぁ、続きが出るまで気長に積んでたんですが。当時に読んでいたら続き気になりすぎて、気が気じゃなかったろうし、10巻発売までまって駆け抜けられたのは個人的には良い読書体験でした。