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「(前略)オレはな、『人間』ってもんにどうやっても返しきれねえほど恩があるんだよ」

(略)

「だから、オレは行くんだよ」少女の頭を柔らかく撫で「どうにもならなくても、何も出来なくても、絶対に上手くいくわけ無くてもな。……それでも、行かなきゃなんねぇ所に行って、やらなきゃなんねぇ事をやるんだよ」

 

 

世界再生機構、天城博士の秘密研究所に逃げ込めたけど、魔法士と非魔法士が入り混じった状態だし……追い込まれていく中で、自死を選ぶ人すら出てきてた。

70Pの祐一の死を受けて他の面々が取った行動が、短いながらに味わいがあって良いですね……セラが泣き崩れるのも、イルが持ち帰られた紅蓮を見つめ考え込んでいるのも。

彼の死があったからこそ、戸惑いながらも錬が動き始めたのも。黒沢祐一というキャラの偉大さが分かって良いなぁ。

喪失の大きさも分かって、寂しいですけど……。

 

雲除去システムを起動するために、賢人会議は非魔法士を根絶しようとして、カウンターとしてシティ側が手にしたのは魔法士を排除するという手札だった。

そしてシティの生産能力的に見ても、賢人会議の切りつめ具合からしても互いに戦争状態を継続できるとしても2か月ほどで、それを過ぎれば兵器製造用のプラントを生産活動に転用するなり拠点整備に移るなりをしないといけない状況にまで追い詰められていて。

 

シティ・マサチューセッツは代表がディーによって殺され、ファクトリーシステムが破壊されたことで陥落。

三千万もの難民が生じる結果となり……シティ側はそれを保護することとなり、賢人会議はいつでも刈り取れるからと放置している状況が作られた。

 

シティ側としては、叶うならば賢人会議をおびき出して一網打尽にしたかった。そこでシティ・ロンドンの代表サリーが提案したのが、シティ・北京の遺産を活用することだった。

マサチューセッツの難民を囮に賢人会議を誘い込み……かつてファンメイたちが暮らしていた『島』の予備。近くにあったそれを落とすという悪魔の作戦が実行に移されてしまうことになり……それぞれの事情から、ヘイズもファンメイも止まることが出来なかった。

 

どちらも腕利きですけど、シティと賢人会議それぞれが覚悟を決めた状態で臨んだ戦場において、個人と個人で出来ることは限られていて。そもそもこれまでの状況から疲労も溜まっていたわけですしね……。

無理かもしれない、と折れそうになっていた時にヘイズをクレアが焚き付けて、ファンメイを助けるためにエドが力を尽くした、というのが本当に良かったですね。

 

2か月というのは、両陣営が戦いを継続できるギリギリのタイムリミットなわけで。当然、どちらの陣営もそこに至るよりも早く動き出すわけですが。

最終決戦に際して、錬は自分が生み出された場所へと踏み込むことに。そこには天城博士の伝言なんかも残されていたわけですが……。

アリスの見出した『世界の解』と言い、天城博士が語る『錬が作られた理由』と言い、全部解決してくれる優しい回答なんてものは与えてくれなくて、結局は今を生きる人々がどうしたいかというのを問われ続けているんですよね。

 

そういう意味では、作戦に参加した人々の尽力によって生かされたイルが、英雄として戻る決断を下したの、良かったですね。

公には死んだことにされていて、だからこそマサチューセッツの兵士たちは戦いに望む覚悟を決めていた。けれど、彼の生存の噂が流れるようになり……イルが舞い戻ったことにより、彼に付いてくれる人々が居たというのがこの窮地にあって本当に嬉しかった。

イル生存の噂を広めることに、弥生やヴィドに孤児の少女沙耶の関与があったのも、魔法士たちだけで物語が動いているわけではないという証明になっていて好き。

迷い続けていた錬が、誰に強いられるのでもなく自ら決めて最終決戦の場所に乗り込んで、存在感を示したのがとても印象的でしたね……。