「人類にも魔法士にも、シティに属する方にもそうでもない方にも、戦争に賛成する方にも反対する方にも、全ての人々に等しくこの回線は開かれています。――誰でも構いません。思想も、立場も、生まれの違いも生物としての在り方も問いません。互いに一切の区別無く、ただこの星に生きる対等の一個の命として。世界の命運が決するまでのひととき、共に語り合いましょう」
長く続いた物語の終焉。あとがきで語られていましたが2001年始動だったみたいですね。いやぁ、本当に完結巻まで読めて良かったです……。
短編集の刊行も決定したようですし、もう少し楽しめるのは嬉しいですけど、まずは一つの大きな流れが決着を迎えたことを喜びたい。
雲除去システムという存在があるからこそ、魔法士も非魔法士もお互いを殺しつくして青い空を取り戻そうとしようとする。
そこで錬が掲げたのは、未来に滅びるとしても戦争を止めるために雲除去システムを破壊しようというもので。
錬に言わせれば、これは儀式のようなものだから、と結構日時を高らかに宣言して。
当然それを阻止しようとする人々もいるし……錬の側についてくれる人だっている。
錬の宣言で耳目を集めた裏側で、エドの船であるウィリアム・シェイクスピアを世界再生機構が奪取して、雲上航行船3隻がそろうことになったのは熱い展開でしたねぇ。
エドの船の管理をしていたシティの研究員たちは、あくまでシティに家族や友人がいるから残ることを選んだけれど、船はあくまで彼に返すべきだという選択をした。
誰も彼もが迷いながら、それでも後悔しないように動いているのが良いですねぇ。
錬がサクラの待つ衛星に踏み込む、そのために他の主要キャラが奮闘してくれるの好きです。
最終決戦の前に、それぞれがどんな経験をしてきたのかというのを語り合っているシーンとか、集大成感が強くてとても楽しかったですし。
そうだよなぁ、これまで何度も出会って別れてを繰り返してきて、多少は相手の事を知っていても、どんな経験をしていたかは知らなかったわけですし。
こういう語らい下手すると死亡フラグになりかねませんが、錬たちが戦いの果てに生き延びてくれたのはホッとしました。
錬を送ろうとする側と妨害する側。その攻防が決着した後、システムの行く末はサクラと錬の戦いにゆだねられることになった。
じゃあその間他のキャラは何もすることがなかったのかと言えば、そうでもなくて……。
全世界と通信網を繋いで誰でも発言できる場を設けて、世界の真実について語らう場を設けることになっていたの、かなり好きです。
何も知らなかった一般市民の勝手な発言があって、それも事情を知るメンバーや指導者たちは受け止めた。まぁあまりにも勝手すぎれば、「発現には責任を伴う」という言葉の重みを知ってもらうことになってましたが。
そして戦いが決着し、その後のエピソード見られたのは嬉しかったですね。
何もかもが上手くいくわけではないとしても、争い合って滅びるような決着を迎えることが無かったのにはホッとしました。
戦争時の絶望的な空気を思えば、天国のようですね。まぁ、火種はあれど歩みを止める者がいないと信じられる決着なのが、この物語らしい気もします。
あぁ、たどり着いたんだなという気持ちです。長く待ち続けたシリーズの完結巻というだけあって、満足感と寂しさが胸に残る。
傑作ファンタジーなので、どうか多くの人に読んで欲しいものですね。