「……今のが、彼女の死、ね」
(略)
「あなたには、聞こ、えた?」
「聞こえたよ」
祖父母の介護のために両親に付き合って離れた故郷へ、つい最近戻ってきた主人公の薊拓海。
そんな故郷・久城には「魔女」と噂される幼馴染の少女、檻杖くのりが住んでいた。
かつては仲が良かったというらしいですけど……戻ってきてからは、敢えて会おうとはしていなかった。
しかし、「魔女になりたい」と宣うクラスメイトが接触してきて、彼は過去の事件を振り返ることになり……その結果として、くのりとの再会を果たすことになるわけです。
記憶を失った少女や川でおぼれた子供、不審なところのある教会。
ちゃんと再会してからは、2人でそういった事件の調査をしたりもしていましたが……。
くのりには確かに魔女と呼ばれるような力があった。
都市伝説に興味があって調べていると言った少女は「魔女の能力は共感能力者」という説を唱えていて、実際ルールの一部には適合していたらしいですけど。
死の残滓を浚う……死を喰らう能力を持つくのりと、そんな彼女にどうしようもなく惹かれてしまう薊くんのお話。
彼の中には間違いない熱があって、それでもなお逃げ出したのはなぜなのか。
それは、くのりが魔女の能力を行使した結果倒れたのを見たからだった。その感情に名前を付けるとしても、恐怖ではなく……。
メイン2人はどこか欠けていて、その凹凸が綺麗にかみ合ってしまうことで物語になるというか。揃って欠けが埋まった薊くんたちは、破滅に向かって転がっていきそうな怖さがある。くのりの母が既に死んでいる、というのもありますしね。
これからの2人を見たいという気持ちもありつつも、そうやって事件に接することは、くのりの死に近づくようなものですから、恐ろしさもあるな……。